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南アフリカ沖のザトウクジラが驚異の復活、最新調査で判明

7/22(月) 18:57配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

回遊するクジラを1頭ずつ数える

 捕鯨禁止から約10年後、ケープペニンシュラ工科大学の鯨類学者ケン・フィンドリー氏は、ザトウクジラの回復をモニターするため、回遊時にケープビダルを通過するクジラの調査を開始した。C1という集団に注目した彼は、1988年の最初の野外調査で46の群れを見つけ、推定360頭のザトウクジラを観察した。

 2002年には、フィンドリー氏が記録したザトウクジラの群れは323、個体数は推定1670頭まで増えていた。

 以後はウィルキンソン氏が調査を引き継ぎ、フィンドリー氏とハリス氏がアドバイザーを務めた。ウィルキンソン氏と数人のボランティアからなる監視チームは、ケープビダル沖を見渡せる砂丘の森の樹冠の間に1対の監視塔を建て、6月末から8月初頭までの期間、午前7時から午後5時までザトウクジラの数を数えた。

 2018年の調査の予備的な分析結果は、ザトウクジラの群れの数は1000を超えないまでも、それに迫ることを示唆していた。ケープビダルを通過するこの個体数を基にすると、インド洋西部全域では3万頭以上と推定された。

 これは、同海域の環境収容力(ある環境において維持できる特定の種の個体数の上限)に基づいて予測される数よりかなり多かった。

「間違いなく成功物語です」

「予想外の数字です」とハリス氏は言う。科学者たちはまだ、モデルの予想と現実との間に食い違いが生じた理由を説明できていない。

 ハリス氏は、ザトウクジラの個体数が大きく回復したのは、人々がクジラの餌を奪わなかったことと関係があるかもしれないと言う。捕鯨禁止後に残ったザトウクジラには、十分な量の食料と時間が与えられたのだ。

 南極大陸でザトウクジラの研究をしている米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の海洋生態学者アリ・フリードレンダー氏は、今回の楽観的な結論は間違いではないと言う。

「私たちは南極海のほかの海域の集団を観察してきましたが、最高のペースで増えています」と彼は言う。「ザトウクジラには中心的な繁殖域があり、繁殖相手を見つけるのが容易で、食物をめぐる競争はほとんどありません。個体数が急増する条件は整っています」

 フリードレンダー氏は、世界の海洋保全の展望についてこう述べる。「ザトウクジラの個体数回復は間違いなく成功物語です。私たちは彼らの勝利を祝福しなければなりません。ただしそれは1つの種の勝利にすぎず、生態系全体の勝利ではありません」

文=Dustin Renwick/訳=三枝小夜子

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