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アニメ映画『プロメア』レビュー 今石洋之&中島かずきの現代的リミックスという制作手法

7/22(月) 20:40配信

KAI-YOU.net

今石洋之監督と中島かずきさんの脚本による、TRIGGER制作の劇場版アニメ『プロメア』。これまでに制作した『天元突破グレンラガン』(以下、『グレンラガン』)と『キルラキル』では、過去数十年間にわたるロボットアニメの歴史や、昭和のサブカルチャーを再構成し、リズミカルに見せてきました。

【画像】新聞に掲載された“大炎上”広告

いわばDJのように、過去のアーカイブからサンプリングやリミックスするようにアニメをつくってきたと言っていいでしょう。『プロメア』の予告が発表されたとき、筆者は「今度は何をチョイスしてリミックスするんだろう?」と期待していたのです。

実際の映画を観て、これまでの趣味的なチョイスから離れていたことに驚きました。今回リミックスしたのが過去の題材ではなく、現代の題材だったからです。

『プロメア』の背景にあるジャンル“シンセウェイブ”

満員電車の中や、あるいは街のどこかで、人間がいきなり炎上する──突然変異で生まれた人類・“バーニッシュ”の登場。彼らは全世界の半分が消失する事態を起こしてしまいました。

それから30年。炎上を起こす新たな人類・バーニッシュは、社会のなかで追いやられる立場になります。バーニッシュの中でも攻撃的な人間が「マッド・バーニッシュ」として破壊活動を行い、リオ(CV.早乙女太一)はマッド・バーニッシュのリーダーとして部隊をまとめあげていました。

彼らを止めるために結成されたのが「バーニングレスキュー」。新人隊員・ガロ(CV.松山ケンイチ)は街で発生する炎上を止めるために日夜闘っていく中で、リオと対決することになります。しかし、マッド・バーニッシュとの闘いの裏には、大きな陰謀が隠されていたのです。

『プロメア』は表向き、今石・中島コンビらしいテイストですが、絵づくりは過去の作品とは違って見えるはず。その理由には、シンセウェイブ(Synthwave)の影響があると思います。

随所に組み込まれるシンセウェイブのエッセンス

シンセウェイブとは何でしょうか? インターネットの音楽ジャンルの1つであり、名前の通りシンセサイザーを主体にした楽曲で、主に1980年代のサイバーパンクや映画、ローポリゴンのCGなどをモチーフにしたアートスタイル表現を指します。インスピレーション元には日本のアニメのほかに、ビデオゲームも含まれています。

近いジャンルに、インターネットのカオスを題材としたヴェイパーウェイブ(Vaporwave)や、日本の80年代アニメやシティポップのきらめきを使うフューチャーファンク(Future Funk)があります。

『プロメア』の絵づくりは、過去の今石・中島タッグの作品のみならず、今の日本アニメであまり見られないでしょう。現在のところ、シンセウェイブやヴェイパーウェイブに影響を受けたタイトルは前例がありません。劇中音楽をつとめた澤野弘之さんのテイストは今回も健在ながら、随所にシンセウェイブのエッセンスが含まれているようにも感じられます。

思えば今石・中島タッグの新作がシンセウェイブとつながるのは、興味深い出来事だと言えます。何しろ、数十年に及ぶロボットアニメの歴史や、昭和のカルチャーといった過去のアーカイブをリミックスする姿勢と、日本のポップカルチャーを奇妙な題材としてリミックスしてしまうジャンル同士が出会ったということですから。

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最終更新:7/24(水) 10:35
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