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MCU製作総指揮、大作出演に監督、Netflixでは料理!? ジョン・ファブローが映画界で愛されるワケ

7/22(月) 10:07配信

リアルサウンド

 現在大ヒット公開中の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』をはじめとしたマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品において、アイアンマンことトニー・スタークのボディーガードで運転手、またスパイダーマンことピーター・パーカーのお目付役として独特の存在感を発するハッピー・ホーガン。いわゆるヒーローではない一般人としてはMCUで最も人気のあるキャラクターではないだろうか。そのハッピーを演じているのはジョン・ファブロー。俳優、監督、プロデューサーとして様々な顔を持つ彼は、『アイアンマン』と『アイアンマン2』で自らメガホンをとり、『エイジ・オブ・ウルトロン』以降の『アベンジャーズ』シリーズで製作総指揮を務めている。まさにMCU作品に欠かせない極めて重要な人物といっても差し支えないだろう。

【写真】スクリーンXで観る『スパイダーマン』

 もともとスタンダップコメディアンを目指していたファブローは、俳優としてそのキャリアをスタートさせた。90年代前半にはコメディ映画やテレビシリーズなどに出演。そして96年に自身の体験をもとにした『スウィンガーズ』で主演・脚本・製作の三役を務め上げ、(同作の監督を務めたのはのちに『ボーン・アイデンティティー』や『SUITS/スーツ』を手がけるダグ・リーマンだ)それをきっかけに数多くいるコメディ俳優のひとりではなく、どんな役でもこなせる個性派のひとりとして認知されるようになるのだ。その後のフィルモフラフィを見れば、超大作『ディープ・インパクト』やマーベル・コミック原作の『デアデビル』など、明らかに出演作の規模が大きくなっているのが一目でわかる。

 そして90年代後半からテレビ映画の監督を務めるようになり、2001年には『スウィンガーズ』でコンビを組んだヴィンス・ヴォーンと共演した『Made(原題)』で劇場映画監督デビューを飾る。ここから、彼の“二足のわらじ”ないし“三足のわらじ”としての快進撃がはじまることに。その最大の成果を遂げたのが2003年、クリスマスをテーマにしたファミリー向けコメディ『エルフ~サンタの国からやってきた~』がサプライズヒットを記録したことだ。公開初週こそ同日公開の『マトリックス:レボリューションズ』の後塵を喫するものの、2週目には興行収入ランキングで1位を奪取することに。

 最終的には1億7000万ドルの興行成績を叩き出し、2003年公開作では『ターミネーター3』や『ワイルド・スピード2』などを上回る第7位にランクインを果たしたのだが、何故この映画がそれほどまでに大ヒットを記録したのか。たしかに、ここ数年のフランチャイズ映画の台頭ではイメージし難いが、2000年代までのアメリカでは毎年1作品は単発のコメディ作品で大ヒット作が生まれている。同作の前年には『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』、2005年には『ウェディング・クラッシャーズ』がその例であり、キャストの知名度や規模関係なしに(いずれも期待度の割に出来栄えが今ひとつだった大作とほぼ重なる時期に公開しているというのは実に興味深い点ではあるが)、一時の娯楽として充分すぎる水準のクオリティが、映画を観ることが習慣化してるアメリカの国民に受け入れられたわけだ。また、この年は典型的なファミリー向けのクリスマス映画がほとんどなかったことも成功の要因だったといえる。

 いくらか運が味方したという見方もできるが、同作によってファブロー自身の監督としての腕が評価されたことは言うまでもない。そして、それと同時に思わぬ才能が浮き彫りになる。それは、かつての彼自身と同じコメディ俳優の端くれだったウィル・フェレルを一躍スターダムにのし上げたという功績だ。さらに、続く監督作の『ザスーラ』ではのちに『ハンガー・ゲーム』シリーズで活躍するジョシュ・ハッチャーソンに、『トワイライト』シリーズのクリステン・スチュワート(クリステンはすでにデヴィッド・フィンチャー作品で注目を集めていたが、その後あまり出演作に恵まれていなかった)など、実力がありながらもくすぶっていた俳優たちに飛躍のきっかけを与えていく。その極めつけは、『アイアンマン』でトニー・スターク役にロバート・ダウニーJr.を推薦したことに他ならない。

 過去に薬物問題で失脚し、その後様々な佳作で徐々に復活を果たしていたダウニーJr.を、超大作へと引き戻した立役者であるファブロー。『宇宙探査艦オーヴィル』でダウニーJr.と同じようにスキャンダルで失脚したロブ・ロウをゲスト出演させたことからも、実力のある俳優の、俳優としての純粋な実力を高く信頼していることが見受けられるだろう。そうした部分に加え、『エルフ』ではレイ・ハリーハウゼンを、『ザスーラ』では『スター・ウォーズ』シリーズのヨーダ役でおなじみのフランク・オズを声の出演でカメオ出演させるなど過去の映画作品への強い敬意を持ち、それを作品に還元させ続けていることも彼が愛される理由のひとつではないだろうか。彼の作品には映画への愛がまんべんなく表れているのだ。

 今年6月からNetflixで配信された『ザ・シェフ・ショー~だから料理は楽しい!~』は、彼がハリウッドで築き上げた人脈を活かした豪華ゲストを招いて、友人の料理家ロイ・チョイとともに談笑しながら料理する姿が映し出されていく番組だ。まるで自身の監督作『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』さながら、料理人としての新たな顔も得ようとしているファブローの姿が実に微笑ましく映る。さらに8月9日には『ジャングル・ブック』につづいて監督を務める、ディズニーの名作アニメーションを最新鋭の映像で実写化した『ライオン・キング』が公開されるなど、映像業界全体から絶大な支持を集めていることがよくわかる。

 もっとも、全米では一足先に封切られる『ライオン・キング』だが、近年続くディズニーアニメ実写化の例もあり興行的なヒットは見込めるものの、すでに解禁されている批評では賛否両論となっている。94年に当時としては異例の大ヒットを記録したオリジナルアニメーションの世界観を驚異的な映像で具現化したその映像には高い評価が集まる一方で、近年のディズニー作品に見られるポリコレ的配慮によって同作の持つテーマ性が変わってしまっているとの声もあり、それが観客に受け入れられるのか否か注目したいところだ。いずれにしても、すでに『ジャングル・ブック』の続編でメガホンをとることも予定されているファブロー。彼の監督としての最大の試金石を突破すれば、今後ハリウッドの中心に立ち、引っ張っていく存在としてさらに活躍することは間違いない。

久保田和馬

最終更新:7/22(月) 10:07
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