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007が黒人女性に! 政治的正しさはどこへ向かうのか

7/22(月) 7:00配信

デイリー新潮

 あの007を黒人の女優が演じることになった――英紙デイリー・メールが伝えたニュースは世界中に衝撃を走らせた。ついに「男女平等」「人種間の平等」がここまで来たのか、とそそっかしい人は思ったに違いない。しかし実際には、ジェームズ・ボンド役は前作同様、ダニエル・クレイグが演じ、女優が演じるのはあくまでも「007」というコード番号のスパイだという。

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 うがった見方をすれば、これは欧米における「ポリティカル・コレクトネス(PC=政治的正しさ)」を追求する風潮を逆手に取った宣伝戦略だとも言える。そもそも007の世界では、「男は強くあれ」という感覚が前提。常に「ボンドガール」たちはマッチョなボンドに惹かれ、彼の言うことに従い、時には命まで投げ出す。こうした世界観が問題視され、ボンドについてはセクシスト(性差別主義者)だ、といった批判がなされたこともあるほどだ。

 しょせんは架空の人物、他愛もないフィクションの話じゃないか、では話は済まされない。PC先進国のアメリカでは、PCの観点でさまざまな言葉や表現が問題視されることが日常化している。それによって翻弄される人も少なくないようだ。

 ハーバード・ロースクールに留学経験を持ち、ニューヨーク州弁護士の資格も持つ山口真由氏は、著書『リベラルという病』の中で、自身が経験したPCの現状を綴っている。以下、同書から抜粋して引用してみよう。

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 私がハーバード・ロースクールに在籍していた2016年には、学校のエンブレムが問題になった。1936年制定のこのエンブレムには、三つの束に結わえられた穀物が描かれているが、元になったのはロイヤル家の家紋だ。そして、このロイヤル家は奴隷を所有してプランテーションで農業を営んでいた。これについて黒人教授や黒人学生が、エンブレムは奴隷制を象徴するものだと抗議し、学校側も改定を認めたのだ。

 1992年の大統領選挙に立候補して旋風を巻き起こした大富豪、ロス・ペローは、黒人の聴衆を前にして「あなた達は」と呼びかけながらスピーチした。この「あなた達」という表現が、黒人を「他人」としてみているとして、PCの観点から批判された。ここまでくると、もはや客観的な基準というより、聴衆の主観のように思え、どうすればいいのか分からなくなってくる。間違いないことは、アメリカで政治家をすることがいかに大変かという事実だ。

 言葉の選び方に鋭敏でなくてはならないということを、違う例で説明していこう。

 歴史、英語で「ヒストリー」を「ヒズストーリー(彼の物語)」だと批判し、「ハーストーリー(彼女の物語)」として、女性の視点から再構成しようとした運動も、広くとらえればPCの一端だろう。「男女平等」とか「男女共同参画」なんて言っている日本は、早晩、「女男平等」「女男共同参画」に改変せよと迫られるに違いない。

 法律家のライティングについて記した教科書には、大真面目にこう書かれていた。

「性別不特定の名詞を『彼』で受け続けると、性差別主義者のそしりを受ける。その反動で、すべて『彼女』で受けるのが少し前に流行したが、逆にこちらも性差別と言われるようになった。注意深く『彼』『彼女』を半々に使い分けるように」

 文章に「警官」「検察官」「被疑者」「依頼者」などが登場するとき、「検察官はこういう役割を負う。そして検察官は……、さらに検察官は……」と繰り返すとくどいので、通常は代名詞で受ける。それを「彼」で受け続けるな、「彼女」も繰り返すな、検察官を彼で受けたら警官は彼女で受けなさい、という「半々」の留意である。

 これを正しく行う事務処理に長けた実務家だけが世に残り、それができなければ、差別主義者の汚名を着せられるかもしれない。

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最終更新:8/2(金) 12:06
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