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全英OP初優勝は「シュールな経験」?シェーン・ローリーのゴルフと家族。

7/22(月) 17:01配信

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 72ホール目。ロイヤル・ポートラッシュの大観衆のすべての視線の中で、堂々と闊歩するシェーン・ローリーの姿に、しばし見惚れた。18番グリーン奥のグランドスタンドに向かって手を振り、笑顔を投げかけるローリーの姿は、まさしくヒーローだった。

 68年ぶりに北アイルランドに戻ってきた今年の全英オープンで、見事な勝利を収めたのは、アイルランド出身の32歳、ローリーだった。

 表彰式で掲げたクラレットジャグは、ローリーが文字通り「母なる大地」で掲げた優勝トロフィー。

 「これはアイリッシュのゴルフにとって大きな意義がある。アイリッシュのスポーツにとって大きな意義がある。だから、このトロフィーはみんなのものだ」

 元々話好きのローリーだが、大勢の人々の前で、彼がこんなにも素敵で粋な優勝スピーチを披露する日が到来したことが、とても嬉しく感じられた。

12歳でゴルフを始め、小技の名手に。

 ローリーが生まれ育った故郷は、ロイヤル・ポートラッシュから車で4時間ほど南下したアイルランドのクララという小さな町だ。

 「子供のころは、地元のゴルフ場で友達とピッチ&パットを競いながら夏休みを過ごした。ゴルフを始めたのは12歳のころだった。僕の家はスポーツ一家だったけどゴルフ一家ではなく、僕は自己流でゴルフを覚えていった」

 近所の仲間たちとの小技競争は、子供としては真剣勝負だったとローリーは言う。それがショートゲームの感性を磨いてくれた。それが、彼が今「小技の名手」と呼ばれる所以である。

 めきめき腕を上げたローリーは、2009年にアマチュアにして欧州ツアーのアイリッシュ・オープンを制覇。すぐさまプロ転向する道を選んだ。2012年に欧州ツアー2勝目、2015年には世界選手権のブリヂストン招待を制し、米ツアー初優勝。

 そのころまでは、ローリーにとって、ゴルフこそが、すべてだった。

子供のころからの夢だった全英オープン。

 人生のプライオリティに変化が起こり始めたきっかけは、2016年全米オープンで勝利を掴みかけて逃した苦い経験だった。2位に4打差の単独首位で最終日に臨んだローリーは、しかし76と崩れてダスティン・ジョンソンに惜敗し、2位に終わった。

 その年、愛妻ウェンディと結婚。翌年には長女アイリスが生まれた。

 「僕のプライオリティは家族だ」

 ゴルフより家族――もちろん、それは心の底から湧き出した真の想いであり、今でも彼にとって最優先は愛妻と愛娘である。

 だが、プロゴルファーであり続ける限り、お腹の底からはアスリートとしての戦意や勝利への渇望が湧き上がってくる。

 全英オープン優勝は子供のころからの夢だった。だが、挑んでも挑んでも優勝どころか予選すら通らず、4年連続予選落ちとなった昨年大会では「僕はカーヌスティのカー・パーク(駐車場)に座り込んで泣いた」。

 父親として夫として大切にしたいもの。プロゴルファーとして手に入れたいもの。ローリーは、その狭間で苦しむ日々に陥った。

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最終更新:7/22(月) 17:01
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