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全国で相次ぐ花火大会の中止、背景にあるのは?

7/22(月) 16:54配信

日経ビジネス

 近年、全国で花火大会の中止が相次いでいる。背景にあるのは自治体の財政難による補助金などの減額や警備費用の増加。「地域の重要な観光資源」ともされる花火大会だが、日本の夏の風物詩は廃れてしまうのか。

【写真】ネックになったのは警備費用の増大。写真はイメージ

 瀬戸内海に面する岡山県玉野市。ここでは例年、8月初旬に開かれる「玉野まつり」に合わせて花火大会が開かれてきた。まつりが50回目を迎える今回も花火大会を予定していたが、主催する振興会は6月になって中止を発表。理由の一つは安全確保に向けた警備員確保の難しさだった。

 「資金不足で今年は開催が困難との結論に至った」。振興会の担当者はそう明かす。海上からの打ち上げを楽しむ約5万人の見物客が道路などに集中するという玉野まつりの花火大会。警察からは振興会に安全対策の強化要請もあったといい、警備員の増員が必要となった。「警備業者の見積もり額はここ数年で1割以上は上がっている」と担当者。加えて、玉野市からの補助金も大幅に減少し、今年の中止を余儀なくされた。

 苦しんでいるのは玉野市だけではない。市の人口の倍近くに及ぶ10万人の見物客が毎年集まる神奈川県逗子市の「逗子海岸花火大会」も今年の開催が危ぶまれている。

 同大会は例年5月末~6月初めに開催してきた。しかし昨年、財政難を理由に逗子市が協会への補助金約1800万円を全額カット。昨年は市民が実行委員会を立ち上げて資金を集めて何とか実施にこぎつけたが、今年は資金集めの目処が立たず初夏の開催を見送った。

 ここでもネックになったのは警備費用の増大だった。観光協会によると、従来、花火大会の警備費用は900万円ほどだったが、警備会社の見積もり額は近年増加。今年は1300万円となった。協会の担当者は「これまでは警備会社とも話し合いをして値上げを抑えてもらっていた部分もあったが、今回は難しかった。ただ、支払いは困難で開催を見送らざるを得なかった」と話す。

 だが、開催を望む市民の声もあり、5月になって逗子市議会が警備費用として1300万円の補助を決定。市観光協会は9月の花火大会実施を決めた。開催には今も1000万円近くの不足金があるといい、賄うためにホームページなどで寄付を呼び掛けている。

●警備員の労務単価は上昇

 警備員を含めた「保安の職業」は有効求人倍率が8倍を超え、深刻な人手不足にある。国土交通省は今年2月に公共事業費の積算に用いる交通警備員の公共工事設計労務単価を前年から約7%引き上げるなど人件費の上昇も起きている。全国警備業協会は「以前から『3K』職場と言われるなど人が集まりにくい職種であったところに、東京五輪やワールドカップ、建設ラッシュなどで需要が大幅に増えている」と解説。今後も人件費が高騰する可能性も指摘する。

 花火の普及などに取り組む日本煙火協会によると、警備費用や自治体の財政難で花火大会が中止に追い込まれるような例は「地方などで年に数カ所ほどはあるようだ」と話す。だが、都市部でも今後の警備費用の増加には警戒する向きもある。

 100万人以上の観客を動員する東京都のとある花火大会。自治体の担当者は「ここ数年、警備会社からの値上げ要請は来ていて受け入れざるを得ない状況だ」と話す。見物客は年々増加傾向にあるといい、「雑踏警備や交通整理など警察や自治体などの協力も得ているが、さらなる安全確保に向けて警備会社に人員増加を要請しても、確保ができないと断られてしまう」と明かす。大人数が一カ所に集まる行事ゆえに、警備費用の節約はご法度。「このまま費用の増加が続けば、うちも運営が難しくなるかも」と危機感を募らせた。

藤中 潤

最終更新:7/22(月) 16:54
日経ビジネス

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