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食品用ラップをめぐる厄介なプラスチック汚染問題、代替品は?

7/23(火) 7:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

便利極まりない生活必需品も、リサイクルが難しいという弱点が。解決の道はあるか

 ツヤツヤとして透明なプラスチック製の食品包装用ラップフィルム(プラスチックフィルム)は、1930年代にある化学研究所で誕生した。ビーカーの底にこびりついて取れなくなった実験の残りかすが発端だった。水をほとんど通さないこの物質は当初、米軍がブーツや飛行機の防水に使用していた。今では食品用ラップには100種類以上ものブランドが存在し、世界中の消費者や食料品店に使われている。

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 米国人は食品用ラップが大好きだ。ある産業調査グループによると、2018年には、8000万人近い米国人が半年間でラップを1ロール以上消費している。多い人では10ロール以上使い、その数は500万人を超えるという。また2019年に生産されるプラスチック製ラップのうち、スーパーマーケットや輸送などで商業利用される量は300万トンにのぼると見られている。

 持ち運びに便利で、安価で、食べ残した食品の寿命を伸ばしてくれるラップだが、大きな欠点もある。プラスチック汚染を悪化させ、リサイクルが難しい。また、有害性が指摘される化学物質から作られていることから、特に環境中で分解された場合は、その影響は大きくなる可能性があるのだ。

「1950年代には、今のように効果的な食品保存の方法が存在しなかったことを考えれば、ラップの需要が非常に高かったのもうなずけるでしょう」と、カナダ、サイモンフレーザー大学の海洋生態毒物学者、リーア・ベンデル氏は言う。

「70年前の暮らしに、プラスチックは入り込んでいませんでしたが、戦後の好況期になって、化学者たちが便利な薬品や物質を次々に生み出したのです。中でも大きな役割を果たしたのが、害虫駆除に使われる農薬、除草剤、プラスチックでした」

ラップは偶然、誕生した

 ラルフ・ウイリー氏がポリ塩化ビニリデン(PVDC)を発見したのは、米ミシガン州ミッドランドにあるダウ・ケミカル社の研究所で働いていたときのことだ。彼はこの物質を、漫画『小さな孤児アニー』に登場する、破壊できない架空の物質にちなんで「イオナイト」と名付けた。

 ウイリー氏がこのとき取り組んでいた課題は、炭化水素と塩素から新しい製品を作ることだった。これらふたつの物質は、ドライクリーニングに使われるテトラクロロエチレンの製造過程で生まれる副生成物だった。

 PVDCは耐水性が極めて高く、ウイリー氏が使っていた蒸留フラスコの底にこびりついたまま、洗い流すことができなかった。PVDC分子は非常に密に強く結合しているため、酸素や水の分子をほとんど通さない。こうした特性から、この物質は軍隊でも、また「サランラップ」という製品名で、米国の一般家庭のキッチンでも重宝された。

 1960年代には、オーストラリアのグラッド社が、ポリエチレンから独自のプラスチック製ラップを作った(ただしこちらは、やや粘着力に欠けていた)。今日では、PVDC、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンから作られた多様なブランドのラップフィルムが、世界中の消費者によって使われている。

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