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ドルトムント、香川真司も舌を巻いた“ロイス・システム”。強力故の弱点も…限界露呈した後半戦【18/19シーズン総括(12)】

7/23(火) 10:41配信

フットボールチャンネル

2018/19シーズンは、これまでスペインが握っていた欧州の覇権がイングランドへと移る結果で幕を閉じた。タイトル獲得や昨季からの巻き返しなど様々な思惑を抱えていた各クラブだが、その戦いぶりはどのようなものだったのだろうか。今回はボルシア・ドルトムントを振り返る。(文:本田千尋)

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●獅子奮迅の働き。香川は“ロイス級”の存在感示せず…

 マルコ・ロイスが引っ張った。18/19シーズンのボルシア・ドルトムント。過去2シーズンは怪我に泣いたドイツ代表FWが、ほぼフルで稼働した。新しく監督に就任したルシアン・ファブレは、ボルシア・メンヒェングラッドバッハ時代の教え子を主将に指名。キャプテンマークを巻いたロイスは、恩師の期待に見事応えた。

 ファブレ監督によって“9.5番”のポジションを与えられたロイスは、水を得た魚のように躍動。それまでウインガーとしての色合いが濃かったスピードスターは、新たな自己イメージを築き上げたと言えるだろう。

 中央に留まらず、前線を左右に広く動き、周囲とコンビネーションを築きながら、機を見てゴール前に入っていく。白い腕章を巻いたことで、ドルトムントを愛する自我が本格的に目覚めたのだろうか。トップ下で獅子奮迅の働きを見せると、ブンデスリーガの前半戦だけで11ゴール7アシストの数字を残したのである。

 その姿に香川真司は「改めて尊敬」と舌を巻いた。与えられたチャンスで“ロイス級”のパフォーマンスを発揮できなかった香川は、ファブレ監督の信頼を掴めず、後半戦からトルコ1部ベシクタシュにレンタル移籍することになる。

 そんなロイスに呼応するかのように、他のドルトムントの選手たちも躍動した。若手ではジェイドン・サンチョが本格的にブレイク。サイドで切れ味鋭いドリブルと高い決定力を発揮した。

●驚異的だったサンチョの成長

 序盤こそ出場機会の少なかったサンチョだが、限られた時間の中で結果を残すと、9月末のレバークーゼン戦を境にレギュラーに躍り出る。10月にはイングランド代表に初招集。ネーションズリーグの対クロアチア代表戦でデビューを飾った。

 18歳の俊英はロイスに負けず劣らずの数字を残す。前半戦だけで7ゴール11アシスト。12月のフォルトゥナ・デュッセルドルフ戦の後で、同じピッチに立った宇佐美貴史は「結構衝撃的なレベル」と驚嘆した。

 FCバルセロナから新加入のパコ・アルカセルは、ジョーカーとしてゴールを量産。前半戦は途中出場した9試合だけで11ゴールを記録。当初は1年でのレンタルだったが、11月にドルトムントが買い取りオプションを行使。23年6月までの契約で完全移籍を果たした。10月には2年半ぶりにスペイン代表に招集されている。

 そしてサンチョとアルカセルに留まらない。U-21デンマーク代表MFヤコブ・ブルーン・ラーセンも台頭。ボランチでコンビを組んだ新加入同士のトーマス・ディレイニーとアクセル・ヴィツエルは、豊富な運動量でチームの屋台骨となった。

 守備陣ではアブドゥ・ディアロ、マヌエル・アカンジ、ダン=アクセル・ザガドゥらが堅守を築き上げ、レアル・マドリッドからレンタル移籍のSBアシュラフ・ハキミは、鋭いオーバーラップでドルトムントのソリッドな攻撃を演出した。

 主将のロイスを筆頭に、新たなスター選手たちが躍動したドルトムントは、ハードワークを主体にハイ・テンポなサッカーを実現。前々監督のピーター・ボシュ、前監督のペーター・シュテーガーが率いた頃に比べれば、より縦に早く強く展開するようになった。

●無敵だった前半戦。後半失速も悲観せず?

 特に攻守にがっちり噛み合った前半戦は、“無敵”とさえ言える出来を披露。リーグ戦では11月にホームで宿敵バイエルン・ミュンヘンを3-2で撃破すると、12月の前半最終戦では好調のボルシアMGを2-1で退け、首位で折り返す。チャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグもアトレティコ・マドリードを抑えて首位通過。

 もちろんCLではアウェイのアトレティコ戦を0-2で落とし、リーグ戦では12月にカウンター主体のデュッセルドルフ相手に1-2で敗れて不覚を取るなど、一分の隙もなく完全無欠だったわけではない。だが、ファブレが就任してまだ1季目であることを考えれば、十分過ぎる結果を出したと言えるだろう。

 スイス人指揮官の就任会見で、ハンス・ヨハヒム・ヴァツケ社長は、18/19シーズンの目標を「チャンピオンズリーグの出場権を得ること」と語っていたのだ。つまり、リーグ戦を最終的に4位で終えること。そう考えれば、前半戦を首位で折り返したことは、やはり目標を達成するために十分過ぎる結果だった。

 だから、後半戦に入って、チームがやや失速したことも、許容範囲と言えるのではないか。ファブレ監督が築き上げた“ロイス・システム”は、ロイスが中心であり、だからこそ、同時に弱点でもあった。何らかの理由でロイスを欠いた時、18/19シーズンのドルトムントには、代わりを務めることのできる選手がいなかったのである。

 実際、ロイスは2月に負傷離脱。2月5日に行われたDFBポカールのラウンド16、対ヴェルダー・ブレーメン戦で筋肉を痛めた主将は、復帰までおよそ1ヶ月を要した。そしてロイスがいない間、ドルトムントはブレーキが掛かったように勝てなくなってしまう。

●“プランB”の構築なるか

 そのロイスが前半だけで試合を離れたポカールのブレーメン戦は、PK戦の末に敗退。9日にホームで行われたホッフェンハイム戦は3点をリードしながら追い付かれ、18日には最下位のニュルンベルクを相手に0-0のドローに終える。その間、13日に行われたCLの決勝トーナメント1回戦は、アウェイでトッテナムに0-3で完敗。戦術的にも精神的にも要のスピードスターを失った影響は明らかだった。

 主将は3月1日のアウクスブルク戦で戻ってきたが、ロイス以外にも怪我人が出たことも重なり、ドルトムントは前半戦のような圧倒的なパフォーマンスを維持できない。“ロイス・システム”だけでシーズンを通して戦うには限界があった。

 とうとう3月25日の第25節を終えて、追走して来たバイエルンに首位の座を明け渡す。第27節でボルフスブルクに勝利して一時は首位に立ったが、その翌節、4月6日にはバイエルンとの“天王山”で0-5の完敗。再び2位に順位を下げ、18/19シーズンはそのままフィニッシュすることになった。

 こうして後半戦では、ロイスのバックアッパーがいないという課題が浮き彫りになった。いくらドルトムントを心の底から愛し、ワールドクラスのパフォーマンスを発揮できたとしても、ロイス1人で3つのコンペティションを戦うチームを引っ張り続けるには、やはり限界がある。

 だが、前述したとおり、18/19シーズンの目標はあくまで「チャンピオンズリーグの出場権を得ること」。そう考えれば、11/12シーズン以来となるブンデスリーガ優勝こそ逃したが、目標は十分に達せられたことになる。

 来る新シーズンでは、ファブレ監督が“ロイス・システム”だけでなく“プランB”を準備できるか、またレバークーゼンから新加入のユリアン・ブラントあたりがロイスのバックアッパーを務めることができるか、そうしたチームとしての“総合力”が問われることになりそうだ。

(文:本田千尋)

【了】

最終更新:7/23(火) 10:51
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