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「老後2000万円」問題に過剰反応する安倍政権の“トラウマ”

7/24(水) 11:53配信

PHP Online 衆知(Voice)

参院選後も、老後資金2000万円問題は終わっていない。国民生活の根幹に関わる年金について、与野党は建設的な議論を進めているのだろうか。

ベストセラー『未来の年表』で、日本が抱える人口減少と少子高齢化という難題を浮き彫りにした河合雅司氏。発売中の月刊誌『Voice』8月号では、河合氏が「今回の騒動は国民の老後不安を煽っただけ」としたうえで、政府与党が老後資金問題に過剰反応したのは過去の苦い“トラウマ”があるからだ、と指摘してる。本稿では、そのトラウマについて語った一節を同誌より抜粋して紹介する。

※本稿は月刊誌『Voice』(2019年8月号)、河合雅司氏の「老後資金問題、『共助』の政策を」より一部抜粋・編集したものです。

「消えた年金記録」問題のトラウマ

端的に語るならば、「きわめて無責任」ということだろう。

「老後の生活資金は年金があっても2000万円不足する」と指摘した金融庁の審議会の報告書が大きな波紋を広げている。だが、混乱の要因は、報告書の内容というよりも、むしろ安倍晋三政権の対応にこそある。

批判的な世論が強まるや、審議会に諮問した本人である麻生太郎財務相兼金融担当相が報告書を受け取らないという愚行に出た。これは、どう考えても麻生氏の独断ではない。

一部の報道で安倍首相や菅義偉官房長官の指示があったというが、あまりにも段取りよく自民党が呼応したところが、それをうかがわせる。「報告書がなくなった」(森山裕国会対策委員長)と闇に葬ってしまったのだ。

こうなると迷走は続く。政府は、野党議員が提出した質問主意書に対して「お答えは差し控えたい」との答弁書を閣議決定するなど質問さえも受け付けない姿勢を示した。

さらに財務省は財政制度等審議会が麻生太郎財務相に提出した財政運営に関する建議(意見書)の原案に盛り込まれていた「将来世代の基礎年金給付水準が平成16(2004)年改正時の想定よりも低くなることが見込まれている」「自助努力を促していく観点も重要」との表現を十分な議論をせずに削除してしまった。

政府・与党が過剰とも思える反応を見せるのは、安倍首相に年金に対する強いトラウマがあるからだ。

「消えた年金記録」問題の対応に失敗して参院選で大惨敗を喫し、第一次安倍政権が退陣に追い込まれた記憶が鮮明なのだろう。

こうした安倍首相の気持ちを代弁したのか、自民党の二階俊博幹事長は「参院選を控え候補者に迷惑を及ぼさないよう、党として注意しないといけない」と、単刀直入な物言いで金融庁を悪者扱いにした。

自民党幹部が、金融庁の局長を呼びつけて謝罪と撤回までさせる念の入れようである。

だが、選挙に不利だからといって報告書を受け取らず、何もなかったことにするといった子供騙しが通用するはずがない。年金は国民の大きな関心事である。

批判的な世論に真摯に向き合わず逃げ続ける姿勢に落胆した人も多いだろう。やがて政権の信頼を著しく損ねるに違いない。

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最終更新:7/24(水) 11:53
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