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甲子園まで2勝 大船渡・佐々木 速球だけじゃない“意外な武器”

7/24(水) 7:07配信

FRIDAY

ブレイク前から「令和の怪物」を見続けているスポーツライターの独自分析

3月の高校日本代表合宿で163kmを記録し、一気に注目の的となった大船渡・佐々木朗希(ろうき、3年)。ブレイク前から佐々木を見続けているスポーツライターがいる。年間約300試合を取材する西尾典文氏だ。甲子園まであと2勝に迫った「令和の怪物」を、西尾氏が徹底分析する。

甲子園のアルプスを彩るチアダン女子高生たち

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7月21日、高校野球の歴史に新たな1ページが刻まれた――。

大船渡のエース、佐々木が投じた117球目が岩手県営野球場のスピードガンで160kmを掲示したのだ。3月の高校日本代表合宿では中日のスカウトのスピードガンで163kmをマークしているが、公式戦では7年前に同じ球場で大谷翔平が記録した数字に並ぶ、高校野球史上最速タイ記録である。試合は9回裏に盛岡四に2点差を追いつかれて延長戦に突入したものの、12回表に佐々木自らの2ランで勝ち越し、激闘に終止符を打った。

筆者が佐々木のピッチングを見るのは昨年7月の盛岡三戦、今シーズン実戦初登板となった3月の作新学院(栃木)との練習試合に続いて三度目になるが、過去2試合と比べても大きな進化が見られた。

一つ目がコントロールだ。昨年7月は立ち上がりから150kmを超えるストレートを連発したが、初回の先頭打者に四球を与えるなど3回までに4四球。終盤にも疲れからか制球を乱す場面が増え、最終的には6四球を与えての完投勝利だった。2回には真ん中に入ったスライダーを5番打者の佐々木莉己に完璧にとらえられて、ホームランも打たれている。3月の作新学院戦でも3回にストレートが大きく抜けて死球となり、その後暴投も重なって1点を奪われていた。

しかし、21日の盛岡四戦では立ち上がりから変化球がコーナーに決まり、不運な当たりなどで3回までに4安打こそ許したが、捕手が構えたところから大きくずれる、いわゆる“逆球”と言われるボールが劇的に少なくなっていたのだ。全身を使って楽に腕を振り、以前にも増して力みなく投げられるようになったことがコントロール向上の要因といえるだろう。

■大谷翔平よりもフォームに余裕

もう一つの成長が精神的な安定感だ。象徴的なシーンが初回にあった。ワンアウトをとって迎えた2番打者の高見怜人は追い込まれるとバットを極端に短く持ち、ファールで粘ろうという姿勢を見せた。ここで早くもベンチはタイムをとって伝令を送るが、佐々木は動じることなく高めのストレートで三振にとって見せたのだ。このボールも決して無理に力で抑えるのではなく、打者の空振りを思わず誘うようなコース、高さに狙って投げ込んでいた。直前に球審からしっかり振り切るように指導を受けていた高見にとっては振らざるを得ないボールだった。

技術的な面では、変化球のレベル向上が大きい。コントロールのところでも触れたスライダーは打者の手元で鋭く変化し、140km近いスピードで落ちるフォークもブレーキは抜群。この二つの決め球をストレートと変わらないフォーム、腕の振りで低めに投げ込むため、ストレートに対応しようとする打者は思わず手が出てしまう。盛岡四戦で奪った21三振の内訳を見てみると14個が変化球で奪ったものだった。この数字を見てもただストレートが速いだけでなく、速いボールを意識させておいて変化球で三振を奪うという投球術の高さがよく分かる。

着実に進化を見せている佐々木だが、その潜在能力はまだまだ底を見せていない。160kmをマークした時のフォームを見ても、7年前の大谷が全力を振り絞って投げているのに対して、佐々木のフォームからはまだ余裕が感じられた。これから体力面が向上していけば、初回から9回までコンスタントに160kmをマークする可能性も極めて高いと言える。同時に変化球もレベルアップしていけば、大げさではなく「世界一の投手」になることも決して夢物語ではないだろう。

大船渡は22日の準々決勝で佐々木を温存したまま勝ち上がり、甲子園出場まではあと2勝となった。目標とする大舞台に立った時、佐々木は果たしてどんな進化を見せてくれるのだろうか。今後も「令和の怪物」から目が離せない。

文:西尾典文(にしお・のりふみ)
スポーツライター。愛知県出身。’79年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

最終更新:7/24(水) 7:07
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