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日韓貿易問題の背後にあるもの:「強気のカード」を切る根拠は何か

7/24(水) 12:00配信

nippon.com

木村 幹

悪化の一途をたどる日韓関係。外交を通じた歩み寄りができない状況について、筆者は「日韓両国が共に米国が自らの味方になり得るという前提で行動し、強気のカードを切り合っている」からと指摘。一方、その“前提そのもの”に疑問を投げかける。

「建前」に隠れた「本音」

7月1日、日本政府は韓国に対する新たな輸出規制措置を発表した。この背景に、元徴用工問題等で混迷を深める日韓関係に対する不満があるのは明らかだ。経済産業省はもともと、安全保障上の理由による一部産品の輸出制限強化を計画していたと言われるが、今回の措置はこの本来なら全く異なる問題が政治的に結合し、日韓関係悪化の「本音」を安全保障上の措置という「建前」で実現した、というのが実情だろう。

参議院議員選挙を前にこの措置が出された理由については、各種の推測がなされている。韓国に対する輸出規制の強化により即座に与党への支持が高まるとは思えないから、そこに何らかの政治的思惑があるとすれば、むしろ政権を支える自らの支持者、とりわけ民族主義色の強い人々に対するアピール(政治学の用語で「結集効果」)を狙ったと見た方がいいだろう。選挙前に出された各種世論調査によれば、この措置は過半数を上回る支持を集めており、政府与党にその計算があったとすれば、その狙いは少なくとも外れてはいないとみてよいだろう。

しかしながら、問題は残る。なぜなら、措置に対する多くの国民の支持は結果として、政府の選択の幅を狭める効果をも持っているからである。韓国へのより強硬な措置を求める空気が日本国内に広がる中、政府は韓国に対し、輸出管理上の「ホワイト国」指定を解除する可能性が高い。強硬な措置の連発は、反発を強めている韓国の世論をさらに強硬な方向へと追い込み、日韓両国の関係は大きな対立へと向かう事になるだろう。

韓国世論は「外交解決望まず」

しかし、そもそも日韓両国はどうしてこのような状況に陥ってしまったのだろうか。最初のポイントになるのは、そもそも韓国が、その憲法の前文に示唆されているように、日本の植民地支配は非合法であるという「建前」の上に成立している国家であり、その前提の上に2018年10月の韓国大法院による元徴用工問題での判決が出されていることだ。

このような国家の正統性にも関わる「建前」にもかかわらず、韓国政府がこれまで元徴用工問題をはじめとする歴史認識問題の管理に力を注いできたのは、経済面と安全保障面において韓国の日本への依存度が大きく、日韓関係の毀損を恐れていたからである。

しかし今日、韓国にとって日本の重要性は低下している。経済発展を遂げた結果、韓国の人々は日韓関係が多少傷ついても、経済的にも国際関係の上でも自らの地位を維持できると考えるようになった。

例えば、韓国の調査機関リアルメーターが7月3日に実施した世論調査では、今回の輸出規制に直面した韓国の選択肢として、日本との外交的解決を望んでいる人は全体の4分の1にも満たない。文在寅政権の与党支持者に限ってみると、外交的な解決に期待する人はわずか5%だ。

だからこそ、文在寅政権もまたこのような世論の動きに一致した形で、日本側の姿勢を糾弾している。政権を支持する進歩派と、これに対抗する保守派との間で世論の分断が進む韓国であるが、今回は保守派メディアや野党も日本に強硬姿勢で立ち向かうべきと主張している。

保守派は文在寅政権の「無策」を攻撃するものの、日本への譲歩を主張している訳でない。韓国の与野党で続いているのは、共に日本の姿勢を非難しつつ、事態の悪化に対する文在寅政権の責任をどう考え、また、事態を打開するためにどうすべきかという「方法論」の違いでしかない。

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最終更新:7/24(水) 12:00
nippon.com

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