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算数教育の危機 「2億円は50億円の何%?」大学生の2割が間違えるという現実

7/24(水) 7:31配信

デイリー新潮

 日本でもようやく来年2020年度から、小学校でプログラミング教育が導入される運びとなった。その背景にはIT分野の人材育成が諸外国に比べて、明らかに遅れていて、将来のAI時代を迎えるにあたり、危機感が高まっているという実態がある。桜美林大学の芳沢光雄教授が解説する。

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 インドなどのIT教育が進んでいる国々と比べて、上記の主張を展開する記事をよく見かける。しかし、インドと日本では置かれている状況がまったく異なっている。それは一言で言ってしまえば、子どもへの算数教育だ。

 日本とインドの算数教育を比較すると、インドは日本よりも学年、地域、私立学校などにより違いがあるとはいえ、授業時間数が約1.5倍とはるかに多く、さらに「理解」を大切にする教育を実践している。日本はその部分が大きく欠落しているのだ。

 しかも、日本の場合、インドや中国の1割ほどの人口なので、本当はこれらの国の上位のクラス並に算数教育を充実させなければ、国際社会に勝っていくことは難しいにもかかわらずだ。

ゆとり教育時代の教科書は時代に逆行

 今でこそ見直されてきた「ゆとり教育」だが、算数・数学教育の「理解」の面で形骸化した実態を紹介しよう。

【図1】は2013年度の筆者のゼミナール生が、教科書研究センターで調査して得たものである。(1)小数・分数の混合計算(小学校教科書)、(2)3つ以上の数字が入った四則混合計算(小学校教科書)、(3)3桁×2桁以上の掛け算(小学校教科書)、(4)全文記述の証明問題(中学校教科書)は、算数・数学教科書でシェアの大きいA社、B社の教科書に掲載されている問題数の年別比較である。

(1)に関しては、混合計算、つまり数字を小数か分数のどちらかに統一しなければ計算ができないという問題だが、ゆとり教育時代はその問題がまったく扱われなくなっていたのである。当然、インドの教科書にはこの類の問題は相当多くある。ちなみに計算機でこれらの計算を行なう場合、一般に前者は実数計算で後者は整数計算となり、データの扱いが異なる。

(2)の3つ以上の四則混合計算問題に関しても減少傾向が見られる。これによって、学校では計算の順序をまともに教えなくなったため、足し算、引き算、かけ算、割り算が交ざっていると、満足に計算できないという日本人も多くなったのだ。

 日本では2006年7月に国立教育政策研究所が発表した「特定の課題に関する調査(算数・数学)」(小学4年生から中学3年生までの約3万7千人対象)には、「3+2×4」の正解率が、小4、小5、小6と学年が上がるにしたがって、73.6%、66.0%、58.1%と逆に下がっていくとのデータがあった。この計算規則は、計算機で演算の順序を規定するために本質的に重要である。

 インドの教科書では、「計算規則を設けないとバラバラの答えが出てしまう」ことを最初に示し、掛け算や割り算は、足し算や引き算よりも先に計算するなどの規則をしっかり教えてから多くの問題を行なう。

 
(3)の3桁×2桁以上の掛け算問題は、ゆとり教育当時の教科書への記載は皆無だ。「ゆとり教育」では、「2桁同士の掛け算ができれば、3桁同士の掛け算などもできる」という無責任な考え方によって、諸外国や過去の日本の教育に例を見ない、2桁同士の掛け算の教育だけで終らせてしまった。

 筆者は以前から、3桁同士の掛け算をきちんと教えるよう主張してきたが、それには深い理由がある。その意義を説明しよう。

 まず2桁や3桁のかけ算は「ドミノ倒し」に例えられる。「ドミノの牌」はかける数やかけられる数を表す。2つだけの牌では、倒すと倒されるだけの関係である。

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最終更新:7/26(金) 15:41
デイリー新潮

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