ここから本文です

算数教育の危機 「2億円は50億円の何%?」大学生の2割が間違えるという現実

7/24(水) 7:31配信

デイリー新潮

【図2】の2桁同士のかけ算では、最初に8×9=72を行ない、その十の位の7を、次の計算5×9=45に加える。ここで、「7を渡すこと」と「7をもらって加えること」は、2つのドミノの「倒すもの」と「倒されるもの」に相当する。

 しかし、3つの牌になると、根本的な計算構造が変わる。どういうことかというと、最初に7×9=63を行ない、その十の位の6を、次に行なう4×9=36に加えて42となり、さらにその百の位の4を、次に行なう7×9=63に加える。つまり、4×9のところでは「6をもらって加えること」と、「4を渡すこと」の2つの作業をしていることを指し、3個のドミノ倒しで「倒されると同時に倒す真ん中の牌」に相当するのだ。

 2桁同士のかけ算では、下から繰り上がってきた数を受け取りつつ、上の位に数を渡すという仕組みを学ぶことができない。だから、3桁以上のかけ算を、子どもたちは戸惑うのがゆとり教育時代の算数教育の状況だ。

 前出の国立教育政策研究所が発表した調査結果では、小学4年生を対象とした「21×32」の正答率が82.0%であったものの、「12×231」のそれは51.1%に急落。小学5年生を対象とした「3.8×2.4」の正答率が84.0%であったものの、「2.43×5.6」だと55.9%に急落した。

 4桁以上の掛け算では、新たな作業が加わることなく次々と続いていくことが分かる。だからこそ、3桁同士の掛け算は重要で、インドの教科書では丁寧に説明した後に多くの問題を課している。ちなみに、次々と続いていく作業は計算機ではよく行うので、掛け算の仕組みでしっかり学んでおくとよい。

(4)の全文記述の問題の掲載数も著しく減少した。論証教育を重視するインドの教科書では、多くの記述問題が掲載されている。また、計算機のプログラム文を書くことと数学の証明文を書くことは、水も漏らさぬように論理を積み重ねていく点で似ている。

 学力の国際調査結果で日本に関してよく指摘されることは、「いわゆる単純な計算は得意であるが、説明文の答案には白紙が多い」ことである。

 2004年2月に行われた千葉県の県立高校入試の国語では、地図を見ながら「おじいちゃん」に道案内することを想定した文を書く問題が出題されたが、結果はなんと受験者の半数が0点だったのだ。地図の説明は、筋道を立てて論理的に説明する力を見る点で適当な題材であり、中学数学における図形の作図文や証明文の学びをいかに大切にすべきか、を示している。

 筆者は、文部科学省委嘱事業の「(算数)教科書の改善・充実に関する研究事業」専門家会議委員に任命され(2006年11月~2008年3月)、上記の持論を最終答申に盛り込んでいただいた。その後の算数教科書は改善されてきている。

2/4ページ

最終更新:7/26(金) 15:41
デイリー新潮

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事