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算数教育の危機 「2億円は50億円の何%?」大学生の2割が間違えるという現実

7/24(水) 7:31配信

デイリー新潮

プログラミング教育の前に算数教育の充実を! 

 21世紀になってしばらく経った頃、松井証券の松井道夫社長は、「21世紀の時代は20世紀までの合計量の評価ではなく、単位当たりの評価になってきた」という内容を述べられた。これは、20世紀までの「+(足し算)」から「%」の時代になったことを意味している。たとえばGDPに関しても、1人当たりのGDPという見方がよく使われるようになってきている。

 それだけに、ITでプログラムを作成するときなど、重要な単語である「%」に関する取り扱いで、間違いなどあってはならない。

 昭和の「いざなぎ景気」超えを果たした2006年11月頃には、新聞やテレビ報道などがこぞって誤った数字を報じた。平成の景気と対比する形で「いざなぎ景気」の年平均成長率を取り上げたわけだが「14.3%」と報じる媒体があれば「11.5%」と紹介するものもあった。これは、相乗平均の考え方で算出した11.5%が正しく、相加平均の考え方で算出した14.3%は間違いであることを、拙著などで何回か指摘したことを思い出す。

 このような注意点もあるだけに、「%」の扱いは軽んじてはならないのだ。

 上で述べてきたように、「教育の犠牲者」とも言える若者を育ててしまった「やり方」暗記の教育から、「理解」重視の教育へ、日本の教育が速やかに、かつ大胆に舵を切らなくては手遅れになるだろう。

 最近の新聞各紙では、来たるAI時代を視野に置いて、小学校におけるプログラミング教育に関して積極的に言及している。しかし、その基礎である算数教育の本質的な部分にある深刻な問題点には、「プログラミングと算数は別」という立場から無視を決め込んでいる。

 また一部のIT企業の関係者は、「IT企業で難しい微分・積分を使うのはほんの一部であり、多くは算数の四則計算で済む内容なので、数学が苦手な方が入社されても困りません」という発言を積極的にしている。ある点でこの発言は正しいのかもしれないが、算数を正しく「理解」していない人間に、プログラムの作成を任せられるだろうか。

「やり方」暗記教育が改善されない背景には、プロセスがメチャメチャでも答えだけを当てればOKという「マークシート式問題」の影響もある。国もようやくその問題点に気付いて、一部記述式の大学入試共通テストを導入する運びとなった。

 筆者は本年4月に『「%」が分からない大学生~日本の数学教育の致命的欠陥』(光文社新書)を出版し、7月上旬には『AI時代を切りひらく算数~「理解」と「応用」を大切にする6年間の学び』(日本評論社)という教育書をつづけて出版した。

 日本の算数教育が、「やり方」だけ暗記させる誤魔化しの教育から、「根本」を理解させるプロセス重視の教育に変わることを祈りつつ、これからも引き続き、精進していきたい所存である。

構成/福田晃広(清談社)

芳沢光雄(よしざわ・みつお)1953年東京生まれ。東京理科大学理学部(理学研究科)教授を経て、現在、桜美林大学リベラルアーツ学群教授(同志社大学理工学部数理システム学科講師)。理学博士。専門は数学・数学教育。近著に『「%」が分からない大学生~日本の数学教育の致命的欠陥』(光文社新書)、『AI時代を切りひらく算数~「理解」と「応用」を大切にする6年間の学び』(日本評論社)など他多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月24日 掲載

新潮社

4/4ページ

最終更新:7/26(金) 15:41
デイリー新潮

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