ここから本文です

タイのおもしろ日本語看板が第2フェーズに突入? <下川裕治の旅をせんとや生まれけむ>〈dot.〉

8/2(金) 11:30配信

AERA dot.

「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。第6回は「タイのおもしろ日本語」について。

【「喫茶店カフェ」の看板はこちら】

*  *  *
 日本からタイへ。タイから日本へ。それぞれ年間100万人を超える人々が行き来する時代である。それぞれの国の言葉が互いに定着していくのは自然だろう。日本ではパクチー、ガパオといったタイ語がメニューに躍り、タイでは温泉、おいしいといった日本語を多くの人が知っている。

 そういう文脈でとらえていいのだろうか。

 その日、僕はBTSという高架電車に乗って、バンコク郊外のサムローンを訪ねた。駅近くにショッピングモールがあった。そこに入ろうすると、入口脇にある一軒の小さなコーヒーショップが目にとまった。

<KISSATEN Cafe>
(実際にはeはアクセント記号付き)

 その店名の前で固まってしまった。

「喫茶店カフェ?」

 これは間違えたのだろうか。

 タイ人が日本に旅行に出かけたとする。日本人と会い、コーヒーを飲んだ。そのとき、日本人たちは、「喫茶店」と呼んでいた。

「日本ではコーヒーを飲む店を喫茶店と呼ぶのか」

そのタイ人がタイでコーヒーショップを開いた。店名で悩んだとき、ふと、日本旅行を思い出した。

 

「日本風に喫茶店という名前にしてみようか。それだけでは意味がわからないから、喫茶店カフェ……」

 そんな店名を決めたいきさつを想像してみる。とすれば、微妙に間違っている気がする。

 その店のオープンには日本人が絡んでいるのかもしれない、とも考えてみる。日本風のコーヒーショップをコンセプトにした店づくり……。それをアピールするために、あえて喫茶店カフェにした。この場合は間違っていない。

 以前のタイには、明らかに間違えた日本語が氾濫していた。「ちゃしラーメン」はチャーシューラーメン、縦書き看板の「シ│フ│ド」はシーフード、「あことめOK」といった表示のようにどう考えても意味がわからないものも多かった。間違った日本語は、ゲストハウスの食堂でだらだらとビールを飲み続ける暇な旅行者に、格好の話題を提供してくれていた。

 それを第1フェーズとしたら、喫茶店カフェは、その先をいっていた。間違えたのか、あえてそうしたのか……。その領域に入っていた。タイの日本語看板は、第2フェーズに入ったということか。

 首を傾げつつ、ショッピングモールに入った。1階には何軒かのファストフード店があったが、そのなかにMILUKU CAFEがあった。下にカタカナでミルクカフェと書かれていた。

「MilkじゃなくてMILUKU」

 これはなにを意味しているのだろうか。

 また足が止まってしまう。

最終更新:8/2(金) 11:30
AERA dot.

記事提供社からのご案内(外部サイト)

AERA dot.

朝日新聞出版

「AERA」毎週月曜発売
「週刊朝日」毎週火曜発売

「AERA dot.」ではAERA、週刊朝日、
医療チーム、アサヒカメラ、大学ランキング
などの独自記事を読むことができます。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事