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中国の経験に学ぶ適切なリブラ規制

2019/8/2(金) 8:47配信

NRI研究員の時事解説

中国の施策にリブラ規制のヒントが

フェイスブックが新デジタル通貨・リブラの発行を計画しているが、大手プラットフォーマーによる金融業への参入では、中国のアリババグループ、テンセントがそれぞれ運営するアリペイ、ウィーチャットペイという(第三者)決済プラットフォームが先駆者である。そして、プラットフォーマーの金融業務に対する規制についても、中国当局によって既に数々の試みがなされている。世界の金融当局は現在、リブラへの規制策を検討中であるが、中国で採用された施策にその重要なヒントを見出すことができるはずだ。

近年採用された中国の規制措置の中で、最も重要なのは、決済プラットフォームが提供する投資商品に対する制限と、決済プラットフォームに中央銀行の当座預金の保有を義務付けたこと、の2点である。

まず、第1の点についてだが、電子商取引最大手のアリババは、顧客間の商品取引を仲介し、その支払いの安全性を確保するために、銀行に特別な口座、エスクロー口座を持って決済業務を始めた。それが、アリペイという決済プラットフォームであり、今やウィーチャットペイとともに、中国のスマートフォン決済を2分している。

顧客は、自身の銀行預金からアリペイの銀行口座(エスクロー口座)に資金を移しておく(預託)ことで、スマートフォン決済サービスを利用することができる。ただし、アリペイの口座に資金を置いたままでは金利は付かない。そこでアリペイは、アリペイの口座にある遊休資金を簡単に運用できる金融商品、中国版MMF「余額宝」をユーザーに提供し始めたのである。

決済プラットフォームのMMFを規制

ユーザーは、スマートフォン上の簡単な操作を通じて、アリペイの口座から資金を移し、余額宝で運用することができる。余額宝は最低0.01元から投資でき、手数料なしで現金を出し入れできる。余額宝を売却する際にも、一両日で資金がアリペイの口座に戻る。その運用利回りは年率4%を超えていた時期もあり、2018年3月には、余額宝の残高は総額で1兆7,000億元近くと、世界最大規模にまで成長した。

しかしその直後、余額宝の運用会社は自ら、その規模拡大に歯止めをかける措置を講じたのである。一人当たりの保有額の上限を、100万元から10万元へと一気に10分の1まで引下げた。また、1日の販売額にも制限をかけた。その結果、余額宝の残高は1年間でピークから約4割も減ってしまったのである。

こうした措置は当局の指示によるもの、いわゆる規制であった可能性が高い。その狙いは明らかにはされていないが、大きく2つ考えられる。第1は、銀行の資金調達をコントロールする狙いだ。余額宝の残高の半分は、期間が30日以内の銀行預金と銀行向け貸出である。それは、銀行、特に中堅銀行や地銀にとって重要な資金調達源となっている。

その結果、企業の過剰債務の抑制などの構造改革を進める際に、銀行の貸出を抑制しようと銀行の資金調達を絞るような金融政策措置を講じても、この余額宝がいわば抜け道となって、政策効果が弱められてしまうのである。

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最終更新:2019/8/2(金) 16:00
NRI研究員の時事解説

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