ここから本文です

夫が借金、妻は「偽装離婚」で返済逃れ 許される?

8/3(土) 10:12配信

NIKKEI STYLE

Case:61 夫が事業に失敗し、多額の借金をつくってしまったようです。夫は私に「このままだと君も債権者に追及される可能性がある。とりあえず役所に届け出を出して離婚したことにしよう」と提案してきました。私も不安なのは事実ですが、このようなことは許されるのでしょうか。

■実質的な婚姻関係を解消する意思は不要

相談はいわゆる「偽装離婚」と呼ばれる形態、つまり本当に夫婦関係を終わらせる意図はないが、借金から逃れるためなど別の理由で役所に離婚届を提出することの是非についての質問と理解しました。
民法は「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と規定しており、夫婦に離婚の意思があり、役所に離婚届を提出して受理されれば、それだけで離婚が成立します(協議離婚)。
ここで要求される「離婚の意思」については、実質的な婚姻関係を解消する意思までは不要で、単に離婚を届け出るという形式的な意思で足りると判例上、解釈されています。このため、離婚届提出の際に届け出の意思さえあれば、その後も同居するなど夫婦としての実態が継続する場合であっても、離婚は原則的に有効と判断されます。

■夫の負債 妻は原則、法的な責任負わず

問題は、そのような形式上の「離婚」をすることに意味があるかどうかです。そもそも、夫婦の一方の負債について他の配偶者は法的な責任を負うのでしょうか? 夫が負債を抱えた場合、妻が負債を抱えた場合のいずれもありえますが、ここでは相談に沿って債務を負ったのは夫という前提で話を進めます。
いろいろな相談を聞いていると、夫が返せなくなった借金は「妻である自分にも返済義務があるのではないか」と誤解している人が少なくありません。しかし、夫婦は一方が負った債務について、他方が法的な責任を負うことは原則的にはありません。
例外的に、夫婦間で行われた日用品の購入や医療費・子どもの教育費などについては、たとえ夫婦の一方が負った債務でも他方が連帯して債務を負担します(「日常家事債務」といいます)。しかし、夫の事業の借金がこれに含まれないのは言うまでもありません。

また、夫が負債を抱えたまま死亡してしまった場合、債務は負の相続財産として妻が法定相続分に応じて相続することになります。しかし、夫が生きている間に夫の債務を負担することは法的にはありません。
なお、夫の借金を妻が保証している場合があります。この場合、妻は債権者に対し、保証人として夫と同じ内容の債務を負っています。これは債権者と妻との契約に基づき負う保証債務なので、夫婦が離婚したからといって責任を免れるものではありません。
そうすると、夫の借金については離婚しようがしまいが妻は責任を負わず、夫の借金について妻が保証人になっていれば、離婚しようがしまいが妻は保証人としての責任を負うわけです。このため、離婚届を出して離婚を偽装しても、それだけでは夫の借金に対しては何の法的効果もないことがわかりますね。

1/3ページ

最終更新:8/3(土) 12:15
NIKKEI STYLE

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ライフスタイルに知的な刺激を。
生活情報から仕事、家計管理まで幅広く掲載
トレンド情報や役立つノウハウも提供します
幅広い読者の知的関心にこたえます。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事