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「ミネラル麦茶」の石垣食品 ワイン飲み放題店を始めたワケとは

8/4(日) 10:12配信

NIKKEI STYLE

「ミネラ~ル・ム・ギ・チャ」のCMで知られている石垣食品が昨年12月、赤坂にワインバー「nomuno2924」(ノムノニクフジ)を出店した。「3000円で100種類のワインが飲み比べできる。しかも時間無制限の飲み放題。食べ物は持ち込み自由」という。外食業界で注目業態のサブスクリプションだが、「麦茶の会社」がワインバーを手がける意図はどのようなものか、石垣裕義社長に聞いた。

――ワインの飲み放題店に参入されました。ワインは長くブームが続いていますが、飲み放題店となると珍しいです。

ビジネスの観点からお話しする前に、実は私は若いころからワインが大好きなんです。会食ではビールで乾杯した後はずっとワインですね。でもそんなに詳しいわけではなく、ソムリエの方に選んでいただいて、そのときの料理に合わせて色々なワインを試すのが好きです。今回のパートナーとなったノムノ(川崎市・蔵石周太社長)さんは、「ワイン100種類時間無制限飲み放題」のスタイルで「nomuno」というワインバーを展開しています。100種類ものワインが飲み放題だなんて、客として自分が真っ先に行きたい店です。

もちろん、ビジネスとしても検討してのことです。飲食業に参入するに当たり、飲食業界の課題は何か、将来飲食業はどうなるのかを考えたところ、やはり人手不足問題が大きいと思いました。その点、「nomuno」という店は、お客様が好きなワインを自分で勝手に注いで飲む形式ですから、ワンオペ(1人で運営する)が可能です。ほかの飲食業態に比べて、損益分岐点が低いのです。お客様も、テーブルサービスはないけれど、好きなだけ好きなワインが飲めるとあって、ほかの飲食業態よりも楽しんでいただけるのではないでしょうか。

もう1つ、飲み放題が日本酒やビールではなく、ワインであることゆえのメリットがあります。「nomuno」には優秀な人が集まるのです。というのも、日本というのは人口比では世界でも最もソムリエ人口が多い国だと言われてるのですが、ソムリエやソムリエの卵の人たちにとっても「nomuno」で得られる情報が多いので、この店で働きたいという人が多いのです。

こんなことからワインの飲み放題店というのは、現在飲食業界が抱える問題を解決する切り札となる業態だと思いまして、参画を決意した次第です。

――好奇心旺盛なお客さんと高感度なスタッフが集まりそうですね。しかもローコストオペレーションであると。

ただ、今回私たちが手がけた「nomuno2924」の場合は既存の「nomuno」とは少し違う業態としています。まず、ワイン以外のドリンクとフードメニューもラインアップしています。ドリンクは当社の商品を使った「焼酎出し麦茶」など。フードメニューは、やはり当社商品の麦茶を使った麦茶飯。それからビーフジャーキーなどです。

そして、フードメニューには店内調理を行うものもあります。店名の「2924」(ニクフジ)は、「肉」と「フジミネラル麦茶」の「フジ」ですが、焼き肉の人気店「肉のヒマラヤ 焚火家(たきびや)」ともコラボレーションしていて、肉料理にも力を入れているのです。

さらに、実は店舗面積が小さいため売り上げを確保するために客単価を上げる必要があり、この6月にワイン飲み放題込みで、しかも肉料理を強調した8000円のコースを設定するリニューアルをしました。

――かなり高めの設定ですね。

しかし、おかげさまでリニューアル以降、連日満員で席が取れない状態です。我々も店に行ってみたいのですが、せっかくお客様がたくさんいらしているのに、関係者で席を押さえるのはよくないだろうということで、今はなるべく行かないようにと言っているところです。

いずれにせよ、既存の「nomuno」とは違う形になっていますが、これが支持されたのだと見ています。


――自社商品もメニューに入れているということは、やはりアンテナショップとして情報収集をするなどのことを狙っているわけでしょうか。

消費者とのリアルな接点を持つことです。当社は麦茶やビーフジャーキーなど消費者向けの商品を製造していますが、それらは小売店で扱ってもらっていて、お客様に直接接する機会はありません。そこで、「nomuno2924」をアンテナショップとして、自社商品のマーケティングを行ったり、新商品開発の拠点としたりすることが狙いです。ここで得た経験と情報から、新しい商品のアイデアが得られること、また、飲食店向けの商品の開発なども手がけていきたいと考えています。

当社はほかに、ECと卸売りを手がける新日本機能食品という会社と、飲食店のオペレーションを手がけるエムアンドオペレーションという会社も子会社としています。新しい商品の新しい流通を新日本機能食品で展開すること、飲食店運営のノウハウをエムアンドオペレーションで生かしていくことも期待しています。

――石垣食品というと「フジミネラル麦茶」のイメージが強いのですが、ビーフジャーキーも製造しているのですね。現在の主要な事業はどのような構成でしょうか。

確かに、ビーフジャーキーの商談で「麦茶の石垣食品さんと同じ会社なの?」と聞かれることなどはあります。現在製造・販売している主なものは、麦茶、ゴボウ茶などの健康茶、ビーフジャーキー、そしてカップめんの乾燥具材です。

――意外な横顔です。それぞれの商品についてうかがいたいのですが、まずヒット商品の「フジミネラル麦茶」はどのようなことから生まれた商品だったのでしょうか。

創業者(故人)は食品について、新しいことを考えることが好きなアイデアマンでした。いつもいろいろなものを考えていましたが、家庭で麦茶を手軽に作れるようにしたら売れるだろうと考えたのが、「フジミネラル麦茶」を開発するきっかけでした。

かつて麦茶と言えば、お湯で煎じて、それを冷やして、飲むのはだいたい翌日からというものでした。暑い季節に熱い湯を使うのがたいへんだったし、手間と時間がかかった。これを水出しにできたら売れるだろうと考えたわけです。

――普通の麦茶は水出しはできないのですか。

焙煎したオオムギをそのまま水につけておいても出ません。水出しにするにはひき割りする必要がありました。そして、それだけでは商品になりませんでした。ティーバッグにしたわけですが、水出し麦茶に合う浸出性がよく強度もあるティーバッグはそれまでありませんでした。また、香りを逃がさない外装フィルムも必要でした。これらを、包材メーカーと一緒に開発することになり、アイデアから製品化までは時間がかかりました。


――松島トモ子さんのCMが印象深いです。

そうですね。しかし、実はCMの初代は江利チエミさんでした。江利チエミさんは当時たいへんな人気で忙しい方でしたから、オファーしても無理だろうと思われたのですが、すでに実際に愛用してくださっていたことからトントン拍子に話が進んで出演してもらえることになりました。

ところが、その2年後ぐらいの1982年に急逝された。それからのCMをどうするかを考えたときに浮上したのが、松島トモ子さんにお願いしようということでした。以前放映されていた江利チエミさん主演の実写版「サザエさん」で、ワカメちゃん役だったのが松島トモ子さんだったのです。そうしたことから、松島トモ子さんならイメージを継承できるだろうということでお願いしたのでした。

――今は麦茶のほかに各種の健康茶も手がけていますね。

これには人口動態の変化が背景にあります。麦茶をたくさん消費するのは、小中学生の子供がいる世帯なのです。ところが、少子高齢化でこの市場はすでに80年代から縮小し始めていました。そこで、今度は高齢層に対応する必要が出てきたわけです。そこで、中高年の方向けに支持される健康茶をいろいろ調べながら展開しています。

――健康茶での売れ筋はどの商品ですか。

健康茶ではごぼう茶がいちばん多く売れています。味では特に女性には支持をいただいていて、水溶性の食物繊維が摂りやすいという点がセールスポイントになっています。女性の方が健康について敏感ですから、ごぼう茶の売り上げ増に貢献してくれているのですね。ちなみに中国でもごぼう茶はポピュラーですが、男性が強壮剤のような飲み方をしているらしいですよ。

――健康茶は、ほかにもさまざまなものが折々に紹介され、御社でもほかの健康茶も扱われています。そのなかでとくにごぼう茶が成功したのはなぜなのでしょうか。

話題があったことと、そのタイミングで当社で量をそろえることができたことです。ごぼう茶が特に売れ出したきっかけとしては、2010年ごろですが、アンチエイジングなどで有名な医師の南雲吉則先生が薦めているということで話題になり、ブームが起こりました。

そして、当社ではちょうどこのタイミングで量を供給できたことが成功につながりました。ごぼう茶には特に皮の部分が原料となるのですが、ゴボウを食材として扱っているメーカーから、食材にはあまり使わない皮の部分を安定的に仕入れることができることになったのです。

――今後の健康茶の開発を考える上でポイントとなることはどんなことでしょうか。

目新しい新素材よりも、食経験のあるものがお茶になる形が有望です。まず、やはり食べたことがないものというのは、なかなか市場に受け入れられにくく、半面、食べたことがあるものなら受け入れられやすい。

また、食品としてすでに扱われているものであれば、ごぼう茶の場合のように、全くの新素材よりも原料調達がしやすいですから。

――少子高齢化、グローバル化と社会環境が激変する日本で、石垣食品は食におけるリーダーシップをどう発揮していくのか、次回お聞きします。
石垣裕義(いしがきひろよし)1961年東京生まれ。85年慶応義塾大学商学部卒業、同年石垣食品入社。98年社長就任、現在に至る。実はB級グルメを自認。会社の近所の安くておいしいランチスポットを探して社員にも紹介。文京区の自宅から飯田橋のオフィスまで電車で出勤するが、帰路は徒歩。おいしい店を探しながらの散策が日課になっている。
(香雪社 斎藤訓之)

最終更新:8/4(日) 12:15
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