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日本の「たばこ規制」なぜこうも歪んでいるのか

8/4(日) 15:00配信

東洋経済オンライン

吸う人も吸わない人も感情論から発言してしまい、何かと炎上しがちなたばこをめぐる議論。「本当の」話を聞いてみよう。『本当のたばこの話をしよう 毒なのか薬なのか』を書いた国立がん研究センター がん統計・総合解析研究部長の片野田耕太氏に聞いた。

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■海外では受動喫煙問題は決着済み

 ──「本当の」は、「科学的な」という意味ですね。

 愛煙派、嫌煙派という立場を離れ、科学的な視点を貫きました。もう1つ、世界のたばこ産業が、いかに科学を歪める働きかけをしてきたかを知ってもらう、ということも「本当の」に込めています。

 ──受動喫煙の健康被害を日本人が最初に指摘したんですね。

 平山雄(たけし)先生が1965年に26万人超へアンケートを実施し、家庭内の受動喫煙者を推定、14年間追跡調査しました。1981年に受動喫煙のある女性の肺がん死亡率が受動喫煙のない女性のそれの1.3倍、夫の喫煙量が多いほど死亡率が高いと論文にまとめています。

 当時の日本はどこでも喫煙できる社会で、平山論文はバッシングを受けました。ただ、研究者は地道な検証を続けて、2004年に国際がん研究機関が受動喫煙は「ヒトに対し発がん性がある」とし、2006年には米政府の公衆衛生総監が、肺がんをはじめ複数の疾病との因果関係があると判定、海外で受動喫煙問題は決着済みです。

 ──実際、欧米のみならずアジア諸国の多くも屋内全面禁煙です。

 これには、2003年に採択、2005年に発効した「たばこ規制枠組条約」が影響しています。条約のガイドラインは分煙を完全否定しています。アメリカの空調学会が、屋内の全面禁煙以外に受動喫煙は防げないと結論づけるほど、屋内から煙を完全に除去することは難しいのです。

 ──日本だけ取り残されている。

 能動喫煙の健康被害を指摘したイギリスのドール氏は爵位を受けました。

 平山先生も世界ではヒーロー的存在なのに、国内では知られていない。それどころか、「平山論文」をネット検索すると「嘘」なんかが一緒にヒットします。日本発の研究が世界中の仕組みを変えた希有な例なのに歯がゆいですね。それだけ、たばこ産業のプロパガンダが浸透しているのです。

 受動喫煙は意思に基づかない喫煙なので、たばこ産業にとってはアキレス腱。「科学的に証明されていない」ので研究しましょうというのが能動喫煙問題のときからの常套手段で、自ら出資してたばこ研究の財団をつくる。当然、利益相反が問題になる。アメリカの会社が日本での受動喫煙の研究結果を歪曲して発表したこともあります。ちなみに、JTも1986年に喫煙科学研究財団を設立しています。

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最終更新:8/4(日) 15:00
東洋経済オンライン

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