ここから本文です

暴力や不貞がなくとも、数年別居しなくともモラハラ夫との離婚は可能<モラ夫バスターな日々23>

8/6(火) 8:33配信

HARBOR BUSINESS Online

弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<23>

 東京家裁の待合室で、当事者の女性が、自分の弁護士に対して、同居時に受けていた、夫からのモラ被害を切々と訴えていた。私は、心の中で、(おい、家裁に来る前に事情を聞いとけよ)とつぶやいた。しかし、隣に座っていたので、嫌でも聞こえてしまう。

 女性は、長時間の夫の説教を受けて辛かったことを説明した後、

「調停ダメな場合、私、離婚できますか」

と聞いた。すると、その弁護士は、

「それだけだとねぇ……暴力とか不貞とかないとね」

と答えた。

「5年間の別居」は不要

 10年ほど前からの傾向として、法律相談を渡り歩く方は多い。その相談の中で、別の弁護士からのアドバイスを聞くことがある。難しい法律問題などの場合、相談者が正確に理解していないこともあろう(弁護士の説明能力の問題でもあるが)。

 しかし、最近、多くの相談者が他の弁護士から聞いてくるアドバイスで最も多いのは、

「離婚するには5年間(3年間)の別居が必要」

 というものだ。結論から言おう。この法的アドバイスは、間違っている。

 離婚理由として、最も頻度の高いのは、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)である。婚姻破綻と呼ばれている。

 その次に頻度の高いのは、不貞行為(民法770条1項1号)である。2号(悪意の遺棄)、3号(3年の生死不明)及び4号(強度の精神病)は、家裁実務では、殆ど使われない。

 なお、妻に逃げられた夫側が悪意の遺棄を主張する例を時折みかけるが、みっともないだけで、原則、認められないのでやめた方がよい。

 以上、民法には「○年間の別居」との規定はない。

婚姻破綻とは、別居期間の長短ではなく、夫婦生活の回復の見込みがない状態

 判例はどうか。最高裁昭和62年9月2日大法廷判決の定義によると、婚姻破綻とは、

「夫婦の一方又は双方が既に(真摯な意思で共同生活を営む)意思を確定的に喪失するとともに、夫婦としての共同生活の実体を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態」

 のことである。定義に別居期間についての言及はない。確かに、別居期間が長い方が、婚姻破綻が認められやすいだろう。

 私の実務経験では、別居期間がゼロであっても、上記の最高裁の定義にあてはまる状況にあり、離婚請求者に不貞等がなければ、離婚が認められる。

 モラ被害を受けた妻が、別居と同時に離婚調停を申し立て、さらにその数か月後に離婚裁判を始めても、殆どの事案で離婚が認められている。冒頭の弁護士のアドバイスは間違っている。

1/2ページ

最終更新:8/6(火) 17:21
HARBOR BUSINESS Online

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事