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『ライオン・キング』映画と違う野生の掟、群れの王はメス

8/9(金) 17:08配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

まるで実写の映画『ライオン・キング』。しかし現実のライオン世界は何もかも反対だ

 ライオンの群れはメスで構成されている。メスが群れの食料の大半を調達し、侵入者からなわばりを守る。その「侵入者」も、なわばりの拡大を狙う、近くの群れのメスライオンだ。

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 世界的なライオン研究の権威で、米ミネソタ大学ライオン研究所所長のクレイグ・パッカー氏は、「メスのライオンは群れの核です。メスこそが「プライド」と呼ばれるライオンの群れの中心です。オスのほうは、群れにやってきたり出ていったりを繰り返します」と話す。

 ところで、映画『ライオン・キング』の熱心なファンでもなければ、主役シンバや父のムファサ、宿敵スカーの名を覚えていても、母親の名前は覚えていないだろう。映画では、重要で印象的な役はオスに与えられている。シンバは王となる宿命にあり、シンバの父ムファサは王位を狙うシンバの叔父、黒いたてがみのスカーによって殺害される。ところが、シンバの母親と言えば、名前を思い出せないくらい印象は薄い。(ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーはナショナル ジオグラフィックパートナーズの主要株主です)

 シンバの母親の名はサラビといい、映画の中では単なる脇役だ。しかし、もしサラビが現実のライオン世界いれば、彼女こそが群れの女王で主役なのだ。ライオンの群れは母系社会だ。実際にオスが群れと行動を共にする時間は非常に短く、ディズニー映画のように家族との絆を築くことはないだろう。

「群れのなわばりの範囲を決めるのはメスです。彼女たちはなわばりの中で育ち、近くの群れのライオンが吠える声を聞きながら一生を送ります」と、パッカー氏は言う。もし、群れの規模が大きくなりすぎた場合は、メスたちがすぐ近くに新しいなわばりをつくり、そこに娘たちが独立した群れを作る。つまり、ライオンの群れに所属する個体は、99パーセントが血縁関係にあるメスたちなのだ。

群れに居場所がないオス

 オスのほうは、メスとは逆に1カ所にとどまらない。彼らは群れに入ったり出たりを繰り返し、大半の時間はオス同士で争ったり、群れを離れたばかりのオスの子ライオンたちに、どうやって生き延びればいいかを教えたりして過ごす。オスは自分が生まれた群れに留まることはできない。すでに説明したように、彼らは群れに属するすべてのライオンと血縁関係にあるからだ。

「映画では、群れに戻って英雄となったシンバが手にする最高の贈り物はナラとの結婚です。これまで説明したように、現実のライオン世界では、ナラはシンバのきょうだいのはずなのです」とパッカー氏は言う。「しかも、戻ったシンバが群れに留まれば、彼が交尾をする相手はナラだけではなく、叔母、母親、祖母、いとこなど、群れに所属するすべてのメスが、彼と交尾することになります」

 だからこそ、オスたちは必ず自分の群れを出て、新しい群れを見つける。そうすることで、家族と交尾をすることを避け、遺伝的多様性を保っているのだ。「シンバも群れを離れたら、二度と戻って来ないのが本当のライオンの世界です」

 ところで、ライオンのオスは単独では暮らさない。群れをめぐる争いは熾烈(しれつ)で、互いの身を守るために、オスは必ず1頭以上のオスと行動を共にするのだ。「自分の家族を乗っ取り、子供たちを殺そうとする他のオスからの攻撃に対抗するためには、共に戦う仲間が必要です」と、パッカー氏は言う。そうなると、ムファサとスカーの争いは、現実のライオン世界においては道理が通らない。2頭は互いに支え合わなければ、自分たちの群れが他の団結したオスたちに乗っ取られるだけだからだ。

 群れをめぐる争いは本当に厳しい。パッカー氏によると、オスの集団が1つの群れのそばにいられるのは2~3年がせいぜいだという(4~5頭のオスがいれば、もう少し長いこともある)。「オスの生活は、落ち着く暇がないほど苛烈なものです」。群れにとってオスは「循環する存在」だ。彼らは子供を作り、「ときどき自らバッファローやキリンなどの大きな獲物を狩ります。でも、戦略はありません。ただ力で打ち倒します」。オスたちは、他のオスをできるだけ長く寄せ付けないためだけに戦い、敗北すれば、別の群れを求めて移動する。

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