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そもそも甲虫ってどんな虫?|とんでもない甲虫

8/9(金) 6:05配信

幻冬舎plus

福井敬貴 / 丸山宗利 (九州大学総合研究博物館准教授)

とげとげ、もふもふ、まんまる、くしひげ、くびなが……。昆虫の概念がひっくり返る、279種のおかしな甲虫を厳選したビジュアルブック『とんでもない甲虫』(丸山宗利・福井敬貴著)が好評発売中!
ところで、そもそも「甲虫」とはどんな虫のこと? 今回は本書より「甲虫とはなにか」を、抜粋してご紹介します。*   *   *

甲虫とはなにか

カブトムシを思い出していただければわかるように、甲虫のいちばん大切な特徴は硬い前翅(ぜんし)だ。

みなさんも知っているクワガタムシやカナブンも同じ特徴をもっていることがわかるだろう。

もうひとつ大きな特徴をあげるとしたら、とにかく種数が多いことである。そもそも昆虫は100万種あまりが知られているが、その約40パーセントにあたる約40万種が甲虫なのだ。

そしてこの数字は全生物の約25パーセントにあたる。

さらにこの数倍の新種が存在しているといわれており、種がちがえばかたちや暮らしが変わると考えると、じつに底知れない世界といえよう。

実際、生息場所は熱帯から極地のあらゆる陸上環境から水中まで、食性は肉食性から雑食性、草食性、菌食性、寄生性などなど、大きさも0.33ミリメートルから17センチメートル程度までじつに幅が広い。

かたちの多様性に関しては本書『とんでもない甲虫』をめくっていただければ説明の必要はないだろう。

 

じつは、最初に話した「硬い前翅」というのが、その多様性の要因なのだ。

甲虫のもっとも古い化石の記録は約2億7千万年前のもので、その当時から硬い前翅をもっていたことがわかっている。

そのころの甲虫は石の下や枯れた植物のなかなどに隠れて暮らしていたが、硬い前翅は体が傷つくことや雑菌の感染を防ぐ役割をもっていた。

やがて明るい環境に出てくると、こんどは前翅で乾燥や敵の攻撃を防いだり、一部は体に毒をたくわえて、前翅に警告色をもったりするようにもなった。

このような前翅のもつさまざまな役割によって、甲虫はいろいろな環境や食性に特化して、たくさんの種にわかれていったのである。


前翅の下には後翅(こうし)が折りたたまれて収納されており、飛ぶときにそれを広げる。

しかし、後翅が退化して、飛べなくなった甲虫も少なくないし、逆に前翅が短くなってしまった甲虫も多い。

いろいろな進化の妙があって、さまざまな甲虫の姿があるのだ。

 


■福井敬貴
1994年福島県出身。2016年、多摩美術大学彫刻学科卒業。2019年、同大学院彫刻専攻卒業。学生時代はおもに甲虫をモチーフとした鋳金作品を制作。幼少期より虫をはじめとする生き物全般に強い興味をもって育ち、採集や標本の蒐集活動をおこなう。昆虫標本の展足技術が高く評価され、コレクターや研究者からの依頼が殺到。今では年間数千頭の標本を展足している。好きな甲虫はオトシブミ。

■丸山宗利(九州大学総合研究博物館准教授)
丸山宗利(まるやま・むねとし) 1974年東京都出身。北海道大学大学院農学研究科博士課程修了。博士(農学)。国立科学博物館、フィールド自然史博物館(シカゴ)研究員を経て2008年より九州大学総合研究博物館助教、17年より准教授。アリやシロアリと共生する昆虫を専門とし、アジアにおけるその第一人者。国内外での昆虫調査で数々の新種を発見している。研究のかたわら、さまざまな昆虫の撮影もおこなう。最新刊『とんでもない甲虫』のほか、『ツノゼミ ありえない虫』『きらめく甲虫』『カラー版 昆虫こわい』『昆虫はすごい』など著書多数。

最終更新:8/9(金) 6:05
幻冬舎plus

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