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薬物で2度の逮捕、「乙女のカリスマ」空白の4年間と復活

8/9(金) 6:30配信

Book Bang

かつて「乙女のカリスマ」と呼ばれ、クリスマスイブに東京の青山ブックセンター本店でサイン会を行えば、長蛇の列ができ、10時間に及ぶ史上最長を記録、『下妻物語』は中島哲也監督、深田恭子主演で映画化されて大ヒットした小説家の嶽本野ばらさん。しかし2007年、大麻取締法の現行犯で逮捕(懲役8ヶ月、執行猶予3年)、そして2015年4月、麻薬成分を含む危険ドラック所持の疑いで2度目の逮捕(懲役2年6ヶ月、執行猶予5年)。以後、郷里の京都市に帰り、表に出てくることは、ほとんどなかったが、この4年あまり、「カリスマ」は何をしていたのか? 京都で話を聞いてきました。

2度目の逮捕とその真相――孤独だった

――この4年あまり、野ばらさんは何をしていたのか、お聞きしたいのですが、此度、刊行された新刊『純潔』のあとがきには2度目の逮捕を「不祥事」と呼び、「僕は心身ともに逼迫していたらしい」「友人に拠れば死臭が漂っていたという」とあります。まず逮捕に関してお話いただけますか。

野ばら 仕事はちゃんとしていたんですよ。逮捕の3ヶ月ほど前、『純潔』のもとになった小説「純愛」が「新潮」に掲載され、「新潮」に一挙掲載するため、オリジナルを3分の1くらいに圧縮しなくてはならず、しかし単行本化にあたって編集者からオリジナルを読んだ者としては圧縮版では物足りないから、元の長さに戻して欲しいと言われた。元の長さに戻すのは簡単なように思えるかもしれないけど、圧縮したものを伸ばせば、物語の強度は落ちるし、贅肉として削いだものは再利用できるわけがない。この人、ひどいことを言うなと思った。たいへんな作業になるから、腹立たしかったけど、やるしかないと思って、「新潮」掲載の「純愛」を底本に全面的に書き直すことにし、逮捕前には改稿作業に取りかかっていた。それと並行してポカロ系ミュージシャンのみきとPさんの楽曲「サリシノハラ」からスピンアウトした小説『サリシノハラ/47』をKADOKAWAからリリースしている。記憶はいまでは曖昧なんだけど、死相は出てたんじゃないかな、あの頃。お金がまわらなくなっていて、物質的に困っていたし、小説家のキャリアにしても本当はこんなに長くつづけるつもりはなかったのに、長くやってしまったという疲弊感もあったし。

――1度目に逮捕されたとき、「薬物は好きではないし、無くてもやっていける」と話していましたが、どうしてまた手を出してしまったのでしょうか? 

野ばら いま思うと東日本大震災の心理的ダメージが強烈だったのだと思う。自分は東京に住んでいて、直接被害を受けてないし、知り合いや親戚も被災したわけでもないのに物凄いショックを受けた。具体的にも外見的にも何のダメージはなくても、たしかにダメージはあって、そのギャップにも苦しんだ。「ダメージを受けています」とは、とても人には言えなかったし、軽々しく言ったら、「被害を受けてないなら、被災地へ支援に行け」と言われそうで、でも僕が行っても役に立つわけがない。阪神淡路大震災のときは大阪に住んでいて、実際に家が倒壊したり、命を落としたりした知り合いもいて、震災を実感できた。その頃はまだネットやSNSはなくて、マスメディアと口コミで情報が届くだけだったけど、東日本大震災ではネットやSNSを通じて情報が洪水のように流れてきて、ある意味、情報のデフレーションが起こり、心理的ダメージは取り除こうにも取り除けず、これについて話し合う人もいなくて、気づいたら、共有される膨大な情報の中で、一人ぽっちになっていた。孤独だったんだと思う。

――2度目は1度目と違って、現行犯による逮捕ではなかったですよね。

野ばら あれはキツかった。現場を押さえられたなら、観念するしかないけど、押収したものを数ヶ月かけて検査したら、少し前に違法になったばかりの薬物が検出されたから、ということだった。上野で押収されたときは、「(薬物を)預からせてもらいますね」「いいですよ。はい、どうぞ」って平和的なやりとりだったし、その後、何も言ってこなかったから、押収されたことも忘れかけていた。何の予告もなく、って予告してくるわけないんだけど(笑)、予告されたら、逃げる人もいるでしょうが、こころの準備はできる。ですが、ある朝、突然、警察が来て、逮捕すると言う。何が何だか、まったく分からない恐怖で、パニック状態になった。

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最終更新:8/14(水) 10:54
Book Bang

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