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成長するインド経済の象徴「コーヒー王」の突然の死

8/10(土) 12:32配信

Wedge

 7月29日の午後、インド最大のコーヒーチェーン「Cafe Coffee Day」を展開するCafe Coffee Day グループ(以下CDG)の創業者であるV・G・シッダールタ氏が行方不明になったと報道され、その2日後の31日彼は行方不明になった場所の近くの川から遺体で発見された。

 シッダールタ氏は遺書を残しており警察は自殺と発表、このニュースは日本でも報道されていたようなので耳にした人も多いだろう。

 遺書は彼の会社の役員や彼が「family」と言っていた社員に向けて書かれており、自殺の原因としてプライベートエクイティファンド(PEファンド)からの圧力や、税務当局からの嫌がらせをあげていた。

 確かに彼はPEファンドからの株式の買戻し要求や、税務当局からの複数の追徴課税の指摘により資金的に苦しんでいたのは間違いない。

 しかし、巨大企業CDGを率いる彼にとってその程度のプレッシャーは特段大きなものとは考えにくいし、さらにある銀行関係者の証言では彼自身が「保有する株の売却で資金融通の目途はたった。今直面している問題はほぼ解決できた」と周囲に話しいたことが分かっている。

 加えて彼が率いるCDG自体も資金的には大きな問題を抱えていないことからその自殺を疑問視する声も一部からは聞こえるが、その状況や遺書からほぼ自殺と考えて間違えなさそうだ。

成長するインド経済の象徴とも言えるシッダールタ氏

 シッダールタ氏はインド南部で代々続く裕福なコーヒープランテーション農家に生まれた。

 大学卒業後、ムンバイの投資銀行でビジネスを学んだ彼は90年代初頭にCafe Coffee Dayの前身となるコーヒー関連会社を設立。96年にはCafe Coffee Day一号店を開店、順調にその店舗を増やし現在は全世界で約1700店舗を展開するインド最大のコーヒーチェーンにまでに成長させた。

 実際私が住んでいる首都デリーでもたくさんのCafe Coffee Dayの店舗があり、私も良く利用する身近な存在だ。従来のローカルなカフェよりは清潔で洗練されているが、インドでは新興のスターバックスほどは価格帯は高くない。CDGはそんな絶妙なポジショニングによりインドで安定した売上を上げ続けているのだ。

 そしてシッダールタ氏と言えば、カフェビジネスのイメージばかりが先行するが、彼が手掛けてきたのはカフェチェーンばかりではない。

 実は彼はIT企業への投資で巨額の利益を得たという側面もある。まだ大きな会社ではなかった90年代のInfosysや、Ivega、Kshema TechnologyそしてMindtreeなどにVCとして投資することで彼は大きな資産を築くことに成功した。

 またこれらのIT企業と関連し、彼は自身のテリトリ―とも言えるインド南部のバンガロールにIT企業の集積地を開発展開する不動産デベロッパーとしても成功している。

 そして彼を語るうえで欠かせないのが彼の人脈だ。

 彼の義理の父はインド外相や州首相まで務めたS・M・クリシュナ氏。彼の成功譚の背景に義理の父からもたらされる人脈が有用だったことは想像に難くない。

 オシャレなコーヒーチェーンというインドでは珍しいビジネスの成功例に見えるシッダールタ氏のビジネスもよくよく調べてみると、IT、不動産、そして政府関係者への人脈というインドビジネス成功の典型例だということが良く分かる。

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最終更新:8/10(土) 12:32
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