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若者の流出、空気に逆らえない人々……矢口高雄の40年前の名作漫画『おらが村』と現代日本

8/12(月) 7:30配信

Book Bang

 漫画家の矢口高雄氏といえば、やはり『釣りキチ三平』のイメージが強い。

 筆者の幼馴染に釣りキチ三平のファンがいて、彼は中学生の頃から熱心に読んでいた。今ではブログで釣り具メーカーの案件記事を請け負うほどのフィッシャーになったのだから、漫画の力は物凄い。

 さて、矢口氏がキャリアの初期に手掛けた『おらが村』という作品がある。今回はこのタイトルがヤマケイ文庫(山と溪谷社)から完全収録版が出ているので、読み解いていきたい。

若者がいなくなった村

 舞台は東北地方、奥羽山脈の麓にある戸数40足らずの村。時期は昭和30年代から40年代にかけて。

 当時の日本は高度経済成長真っ盛りで、今日食べるものにも困っていた昔の記憶はほぼ消え去っていた。飽食の時代の到来だ。それに歩調を合わせるように、政府はコメ農家に対する減反政策を施行する。日本は1995年まで食糧管理法という法律が存在し、コメの生産や流通は常に政府が介入していた。

 稲の品種改良で収穫率は向上したとはいえ、減反がその効果を相殺してしまう。村での仕事は減り、若者は高給を求めて都市部へ出稼ぎに出るようになる。

『おらが村』の主人公、高山政太郎は一農家の長であり、村議会議員でもある。村の中では開明的な発想を持つこの人物は、平凡な日常を送りながらも村に少しずつ訪れる「変化」に呑み込まれていく。

 村の抱える一番の問題は、先述した通りの「若者の出稼ぎ」だ。農繁期が過ぎたら若者は都市部へ行ってしまう。その間、たとえば村で火災が発生したらどうするのか。消防団は人手不足で、ロクにポンプを扱える者もいない。コミュニティーの最前線に立つはずの20~40代の人材が村から流出しているのだ。

 が、その一方で政太郎の子供たちも軒並み出稼ぎに行ったり、東京で就職している。政太郎も村の窮状を偉そうに批判できる身分ではなく、彼自身もそれを自覚している。

 政太郎が立派なのは、横たわる課題に対して上から目線で物を言わない点だ。自分も問題の当事者であることをはっきりと理解している。安全地帯から石だけを投げるようなことは絶対にしない。

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最終更新:8/13(火) 11:56
Book Bang

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