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なぜ創業150年の旅館は破産したのか

8/12(月) 7:00配信

日経ビジネス

 江戸時代から150年続く山口県長門市の老舗旅館、白木屋グランドホテルが2014年1月に破産した。7代目社長になるはずだった元専務の平井真輔氏(仮名)は、会長の伯父と社長の父の下、経営再建に奔走した。だが、世代間の考え方の違いで改革の速度が遅れた。旅行スタイルが団体客から個人客中心に変わる流れに対応できず、行き詰まった。経営破綻に至るまでの内実を平井氏が明かす。

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 先代が会社に残っている場合、後継者が改革を進めようとしても、先代が従来の方法にこだわり、抵抗勢力になりがちです。老舗ほど踏襲したくなるものは多いでしょう。その溝を埋めるのには時間がかかり経営改革が遅れます。私はこれを経験しました。

 白木屋(しろきや)グランドホテル(以下、白木屋)では、2000年に専務として私が戻ったとき、伯父で5代目社長を務めた会長の太郎(仮名)と、父で6代目社長の豪太(仮名)の2人がいました。彼らとの価値観のギャップにすごく苦しみました。

●17ある宴会場が満室に

 白木屋は、山口県長門市で600年近い歴史を誇る湯本温泉街にあり、1865年に創業した旅館でした。1977年には客室数118、宴会場 17の規模まで拡大しました。秋の行楽シーズンには、宴会場が満室になるほど団体客で賑わったそうです。

 業績のピークは、ちょうど父が6代目社長に就いた90年。企業を中心に団体客が次々に入り、21億円の売上高を記録しました。

 ところが、バブル崩壊とともに、業績が悪化していきます。原因は旅行スタイルの大きな変化。法人の団体旅行の需要が減り、友人や家族など個人旅行の需要が増えた。その流れから白木屋は完全に取り残されてしまったのです。 

 そうした中、心筋梗塞で父が倒れ、 「そろそろホテルを継ぐ思いにはならんのか」と言われたことがきっかけで、私は大手商社を辞めて入社します。伯父と父は高齢だったので、実務全般を私が担うことになりました。

 いざ中に入ってみると、経営状態は相当悪かった。2000年の売上高はピーク時の約3分の2に当たる14億6200万円にまで減少し、経常損益は6000万円の赤字。既に債務超過で、金融機関から新規融資を受けられない状況でした。

 個人客が主流の時代に、画一的な10畳和室が大半。バリアフリーではなく、露天風呂付きの部屋もない。そして何しろ大型改修の資金がなく、建物自体が古い。

●埋まらない価値観の差

 「できる範囲で経営改革を進めたい」と考えた私は、最初から伯父や父とぶつかりました。何か新しいことを始めようとすると、決まって反対されたのです。空き時間を見つけては伯父と父、私の3人が社長室の応接セットに座ってやり合う。そんな状態でした。

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最終更新:8/12(月) 7:00
日経ビジネス

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