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ついに日本発売、アップル「HomePod」レビュー。期待以上の音質、気になるSiriの実力は?

8/13(火) 9:00配信

PHILE WEB

アップルの音声アシスタント「Siri」に対応したスマートスピーカー「HomePod」が、いよいよ今夏、日本で発売される。発売目前に、実機を事前に試す機会を得た。気になる音質や、Siriの日本語対応力などをレポートしたい。

HomePodはSiriに対応した初のスマートスピーカーだ。2018年2月に米・英・豪から先行発売されている。今回Siriの日本語対応を実現し、万全の体制を整えて日本上陸を果たした。価格は32,800円(税別)。カラーバリエーションにはホワイトとスペースグレイの2色が用意されている。

■アップルらしいテクノロジーを詰め込んだスマートスピーカー

高さ172mm/幅142mm、質量は2.5kgという、コンパクトなブックシェルフスピーカー程度の筐体に、最先端のスマートオーディオテクノロジーが詰め込まれている。

アップルが独自に設計したスピーカーのシステム構成はとてもユニークだ。低域を受け持つウーファーユニットはスピーカーの上部に、開口部を上に向けて配置する。ゆったり20mmのストローク幅を確保しているので、厚みと弾力感に富んだ低音を力強く押し出してくる。力強く滑らかな、まさしく“オーディオグレード”の低音だ。

内部ではアップルの「A8」チップが6基のマイクによるアレイシステムと内部の低音EQマイクを賢く制御する。

「スタジオレベル・ダイナミックプロセッシング」と呼ばれる機能により、ユーザーがHomePodを置いた部屋の音響環境に合わせて自動的に低音を最適なバランスに調節してくれる機能がある。

スピーカーから出力した音を、マイクで拾ってプロセッサで解析するという処理を瞬時に判断、音楽を再生しながらリアルタイムに行うところがアップルのスマートスピーカーらしいところだ。含まれる低音成分は当然ながら楽曲によって千差万別だ。HomePodの「スタジオレベル・ダイナミックプロセッシング」は楽曲の再生中、30秒ごとに、常時低音のバランスをモニタリングしながら歪みのないクリアな低音に整えてくれる。

筐体のボトム側にはそれぞれにアンプを備える7基のビームフォーミングトゥイーターが同心円状に並べられている。詳細は明らかにされていないが、各トゥイーターユニットの構造はフォールデッドホーン方式として、あたかも一体化されたユニットのように動かしながら、筐体のボトム側に音を360度方向へ広げて放射する設計となっているようだ。なおHomePodの外装は編み目の細かなファブリック素材としている。

スピーカー内部の中段あたりには6つのマイクユニットがベルトのように配置されている。独自のエコー除去処理により、音声コマンドを素速く正確に取り込めることが特徴とされている。もちろんトリガーワードはiPhoneやAirPodsでお馴染みの「ヘイSiri」だ。話しかけると天面のLEDライトが点灯し、機敏に応答を返してくれる。静かで見通しの良い屋内であれば、スピーカーから10m近く離れた場所から小さな声で話しかけてもSiriは反応してくれた。

なお、HomePodに話しかけた音声コマンドの内容は独自に暗号化処理が行われ、ユーザーのApple IDに結びつけられることなく、匿名化された状態でアップルのサーバーに送られ、適切な処理が返される。ユーザーのプライバシーを最大に配慮したスマートスピーカーであると言えそうだ。

HomePodは単体でも十分使えるスピーカーだが、2台以上揃えればペアでステレオ再生も楽しめる。試聴インプレッションについては、このあと報告したいと思う。

■いつも「いい音」に自動調整。ペアリングも超カンタン

HomePodを楽しむためには、iOS 12.4以降を搭載したiOSデバイスとWi-Fiネットワーク環境が必要になる。セットアップを行うiPhoneなどiOSデバイスに「ホーム」アプリと「ミュージック」アプリが入っていることも確認しておこう。

セットアップの方法は、iPhoneとAirPodsをペアリングしたことのある方には「あれと同じ」と言ったほうが伝わりやすいだろうか。迷わず簡単に、素速く数ステップでペアリングができてしまう。

本体を電源につなぎ、少し待つとアラーム音が鳴って天面に白いライトが点灯する。その後にロックを解除したiOSデバイスをHomePodに近づけると、AirPodsでもお馴染みの設定アニメーションの“HomePod版”が表示される。

HomePodの場合、設置する部屋の種類(リビング、ベッドルーム、玄関など)を選択後、「パーソナルリクエストを有効」にすると、ユーザーのApple IDにひも付いたiCloudの情報がHomePodに転送され、Apple Musicへのアクセス、ルーターのWi-Fiネットワーク設定なども、ガイダンスに従って進めるだけですぐに完了する。

HomePodには、先述した低音を最適化する「スタジオレベル・ダイナミックプロセッシング」のほか、スピーカーを置いた場所の音響環境を自動的に測定してベストチューニングに整えてくれる「空間認識」と呼ぶ機能も搭載されている。

本体の設置後、初めての音楽再生中に、高性能マイクアレイを使って部屋の音響反射の特性を2回のオートキャリブレーションにより測定する。AVアンプやサウンドバーのようにルームチューニングの専用メニューが用意されているわけではないので、ユーザーとしては音楽を聴いているあいだに、いつの間にかHomePodのサウンドがいい感じになる、ありがたい機能だ。

ユーザーがHomePodの位置を少しでも移動させると、スピーカーに内蔵されている加速度センサーがこれを検知し、空間認識機能を再度走らせる。でも、やはりユーザーに意識させることなく勝手にやってしまうので、結果HomePodは「いつも最良のリスニングコンディション」に保たれているというわけだ。

物理的なセットアップが完了した後は、HomePodの各機能の設定を「ホーム」アプリから行う。アプリの「マイホーム」画面を開くと、アップル独自のスマートホームのプラットフォームであるHomeKitに対応するスマート家電やIoT機器、そしてHomePodのアイコンが表示されている。HomePodのアイコンを長押しして「設定」を開くと、Siriの動作や女性/男性音声の切り替えなどのメニューが並んでいる。

なおHomePodの操作は、Siriによるボイスコントロールだけでなく、天面のタッチ操作でも、楽曲の再生・一時停止や音量のアップダウンなどが行える。iOSデバイスのコントロールセンターに「ホーム」アプリを並べておくと、素速くコントロールできることを覚えておきたい。

もしフィリップスのスマート照明「Hue」シリーズなど、HomeKitに対応する家電機器が手元にあれば、HomePodを司令塔にして音声でコントロールできる。「ホーム」アプリから各機器を自動で連動させる「シーン」やオートメーションのプログラムも、必要に応じてぜひ作ってみてほしい。

■まさしくオーディオグレードに到達した高音質

続いて、HomePodのサウンドをしっかり聴いてみよう。最初にApple Musicのストリーミング音源を聴いた。ジャズピアニスト、川上さとみの演奏はピアノの透明な音色がすうっと身体に染み込んでいく。余韻がとても歯切れよく爽やかだ。楽器の音に歪みがなく、ウッドベースの低音に自然な温かみが漂う。細かなニュアンスの表現力にも長けている。

竹内まりやのボーカルは肉付きがとてもふくよかで、声の輪郭線に健康的な力強さが感じられる。音像定位も鮮明で、程よく前に迫ってくる。バンドの楽器はホーンセクションの高域の艶めきとキレの良さが冴え渡る。小さなHomePodから、圧倒されるほど生々しくエネルギッシュな音があふれ、部屋中を満たす。

次にジャズベーシストのマーカス・ミラーの楽曲で、低音再生を確かめた。HomePodはかなり重量級の低音を再現できるスピーカーだ。音像をだぶつかせずにビシッと引き締めて、鋭くゴリッとしたインパクトを打ち込んでくる。筋肉質でセクシーな低音だ。中低域とのセパレーションも非常に明瞭なので、バンドの各楽器が躍動する様子がはっきりと目に浮かんできた。いわゆる無指向性の360度スピーカーにありがちな、ふわっとしたリスニング感とは対極にある、音楽の芯に宿るグルーヴを熱く主張してくるサウンドがHomePodの持ち味だ。

HomePodはAirPlay 2によるワイヤレスリスニングにも対応している。iOSデバイスによるスピーカーの初期セットアップを完了すれば、MacとiTunesとの組み合わせによるAirPlay再生が楽しめる。

先日から「Apple Digital Masters」として新たなスタートを切った、アップルのiTunes Storeで販売されている高音質作品をダウンロード購入。HomePodとMacBookによるAirPlay再生もチェックした。

tofubeatsのアルバム「POSITIVE」からリードボーカルに中納良恵を迎えた作品『別の人間』では、磨き抜かれたクリアなボーカルのハイトーンがみずみずしい色彩感にあふれる音をHomePodが描いてみせた。コーラスとのハーモニーが柔らかく重なり合って、底なしに澄み渡った余韻を残しながら静寂と溶け合う。あまりの心地よさに、何度も繰り返し同じ曲を聴きこんでしまった。

■2台揃えてステレオ再生を試してみた

ところで、1台のHomePodに対して同時にペアリングできるiOSデバイスは1台まで。Siriにはユーザーの声紋を認識する機能がないため、Apple Musicの定額制音楽配信サービスをメインにするのであれば、家族ひとりのApple IDにひも付いたHomePodが1台あれば、音楽再生自体は十分に楽しめる。

もしApple Musicを使い込むうちに、家族のお気に入り楽曲やアーティストがライブラリに混ざることを避けたい場合、あるいはそもそも好きな音楽を自分の部屋で独り占めして聴きたいという方は、HomePodを家族用と自分用に分けて持つべきだろう。

2台以上のHomePodが揃うと、マルチルーム再生やステレオ再生が楽しめる。2台のHomePodのステレオペアリングは初期セットアップ時に設定できるほか、後から「ホーム」アプリでグループを作成してもいい。

ステレオ再生の効果は音が一段と伸びやかになり、ボーカルの自然な立体感と弾む低音のスピード感の向上などにも現れてくる。HomePodは1台でも十分にパワーのあるスピーカーだが、ステレオ再生にするとその力のバランスをますます精緻にコントロールできるようになる印象を受けた。

HomePodの高品位なサウンドが、ほかのIT企業の純正スマートスピーカーと一線を画していることは、誰が聴いても明らかだろう。むしろオーディオ専業メーカーのスマートスピーカーと比較しないとフェアな評価ができないほど、その完成度は高い。

当サイトをご覧のオーディオファンの中には、すでに自宅にHiFiグレードのネットオーディオ再生環境を導入している方も多いだろう。既存のオーディオ再生環境の中にHomePodを加えれば、サブ的に音楽を聴くワイヤレススピーカーとして、あるいはAirPlayの音声操作対応コントローラーとして、存分に真価を発揮してくれるだろう。

■日本語に対応したSiriの完成度は?

日本語に対応したSiriは、音声コマンドに対するマイクの感度、聴き取りの精度、ともにハイレベルだと感じた。応答を返す時の音声合成については、時々「田中裕梨」を「たなかひろしなし」と読んでみたり、アーティストの名前を間違えることもあるが、このあたりはいずれ機能向上でブラッシュアップされるものと期待したい。

自分でも意外だったのだが、iPhoneで聴いている時よりもHomePodで聴いている時の方が、気に入った楽曲を音声でプレイリストに登録したり、お気に入りの楽曲にレート(星評価)を加えることが増えた。iPhoneの画面を見て、手で操作するより手間が少ないからだろう。

ほかにも本体のセットアップ時に設定したパーソナルリクエストを有効にしておけば、メッセージの送受信やリマインダーの設定、電話をかけたり、カレンダーのスケジュール確認なども、ペアリングされているiOSデバイスを傍らに置いておけば、HomePodからSiriによる音声操作を使ってできるようになる。

屋外で大勢の人が周りにいる環境では、それなりに勇気を出さないとSiriに話しかけられない。ところが家の中なら抵抗感はかなり薄まるし、電子機器に話しかける違和感もすぐに払拭されるはずだ。HomePodを通じてSiriの便利さが広まったら、今後のアップデートに関心を向けるユーザーも増えるだろう。

■アップルのハードとコンテンツの進化を促すHomePod

HomePodはiOSデバイスと組み合わせることによって、最も手軽に質の高いコンテンツ再生が楽しめるスマートスピーカーとしておすすめしたい。Macについては音楽再生ソフトと組み合わせ、AirPlayリスニングが楽しめることは先に触れた通りだ。こちらも相性の良い組合わせと言える。

Androidデバイスについては、基本的にHomePodに対応していないので、どうしてもHomePodを使いたい場合は、例えば「CloudPlayer」のようなAirPlayに対応するアプリを介して音楽ファイルを再生するかたちになる。

Bluetooth対応のDAPなど、Android非搭載のオーディオプレーヤーについては残念ながらHomePodにワイヤレスでつなぐことができない。ワイヤードの外部音声入力についても非対応だ。やはり何らかのiOS 12.4以降を導入できるiOSデバイスを用意したい。

Siriによる音声操作に対応した音楽配信サービスは、今のところApple Musicに限られるが、SpotifyやHF PlayerなどAirPlay対応アプリがあれば、聴きたい楽曲をiPhoneで選び、HomePodに飛ばして聴ける。YouTube動画の音声、インターネットラジオのTuneInアプリも、同様にHomePodにキャストして再生できた。

HomePodからSiriによる音声操作に対応するアプリやハードは、これから徐々に種類と数が充実していくものと予想される。今秋サービスインが予告されているアップルオリジナルの動画サービス「Apple TV+」や、定額制オンラインゲーム配信「Apple Arcade」のコンテンツも、HomePodで迫力のサウンドで楽しめるようになることを期待したい。

様々なコンテンツを「いい音」で楽しむ大切さに気付かせてくれるHomePod。これからアップルが展開するハードとコンテンツをつなぐ、架け橋になるスマートデバイスだ。

山本敦

最終更新:8/18(日) 15:50
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