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10万匹を根絶へ、人間が持ち込んだビーバーにまつわる悲劇、南米

8/14(水) 9:10配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

ビーバーを根絶へ

 2008年以降、アルゼンチンとチリは、ビーバーの個体数を制御するだけでは不十分であり、完全に根絶しなければならないという点で合意している。同年に発表されたある報告書は、ビーバーの根絶は可能ではあるものの、その費用は最大で3300万ドル(約36億円)にのぼると試算している。GEFを始めとする協力団体からの資金提供を受けた両国は、2016年に、最善の方法を探るための試験プロジェクトを始動させた。

 今年に入って、研究者らは、アルゼンチンで2016年10月から2017年1月にかけて行われた試験プロジェクトの予備結果を発表した。試験プロジェクトの期間中、あらかじめ指定された範囲内にビーバーを捕らえるための罠が仕掛けられた。その結果、合計197匹のビーバーが罠にかかったほか、7匹が射殺された。これで一帯のビーバーは完全に駆逐されたと思われたものの、その後、自動撮影のカメラに数匹の姿が写っているのが確認されている。これらのビーバーが外部から試験エリアに「再侵入」した個体なのか、仕掛けられた罠を逃れたものなのかは、はっきりとはわかっていない。

 同プロジェクトの実施に携わったティエラ・デル・フエゴの動物・生物多様性担当責任者、エリオ・クルト氏は、この結果によって、ビーバーの根絶が技術的に可能であることが確認できたと考えている。ただし、これは容易なことではない。

 ティエラ・デル・フエゴは、数百もの小島から構成される諸島だ。もしビーバーがたった1つの島で生き残れば、彼らは諸島全体のみならず、本土にまで再び広がる可能性があると、クルト氏は言う。試験調査が完了する数年後には、チリとアルゼンチンの両国政府は、計画の進め方について合意をする必要がある。それぞれの国が異なる戦略を取ることになれば、良い結果は得られないだろう。

 クルト氏は言う。「ビーバーの根絶を成し遂げられるかどうかは、政治的意志を持続できるかどうかにかかっています」。アルゼンチンでは、インフレによって人口の3分の1が貧困状態にあり、国の南端にある森を守ることへの国民の同意を得るのは、そう簡単なことではないだろう。

 それでも、もし人々が現地に足を運び、ビーバーがもたらした惨状を目の当たりにすれば、アルゼンチン人もチリ人も、だれもがビーバーの根絶を支持するだろうと、ガジャルド氏は考えている。ガジャルド氏のツアーに最近参加した人の中に、自分は肉を食べないし、動物を殺すなどとんでもないと言う獣医がいたという。だが、ナバリノ島の骸骨のような白い森を一日一緒に歩きまわるうちに、獣医はいつしか、ガジャルド氏がビーバーを撃つのを熱心に手伝うようになっていたそうだ。

「わたしがビーバーを狩る理由に、納得がいったのでしょう。狩りをするのは生態系を守るためです。ビーバーに落ち度はありません。木を切り倒すのは彼らの習性です。責任は人間にあります」

文=HALEY COHEN GILLILAND/訳=北村京子

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