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支持率低迷のプーチンが不人気政策をやるワケ

8/14(水) 9:15配信

プレジデントオンライン

■プーチン大統領の支持率は過去最低水準

 報道によると、ロシアの首都モスクワでは7月27日、9月8日に実施される市長選をめぐるデモを実施しようとした野党勢力とその支持者約1400人が、治安当局に拘束されたとのことである。ここ数年で最大規模の拘束者数とされ、プーチン政権が反対勢力を力ずくで抑え込もうと躍起になっている現状が浮き彫りになった。

 また8月10日にもモスクワ市長選で公正な選挙が実施されることを求める大規模なデモが行われ、約5万人が参加したようだ。参加者100名以上が身柄を拘束されたとのことである。当局が公認したデモとしてはプーチン大統領が2018年5月に首相から大統領に転じて以降、最大規模のものになった。

 2018年5月に再就任したプーチン大統領の任期は24年5月までの6年間。憲法改正がないかぎり、多選規定によって最後の任期となる。これまで国民に圧倒的な支持を受けてきたプーチン大統領も再就任以降は支持率が低迷しており、いずれの有力な世論調査でも30%程度と過去最低水準で推移している。

 危機感を強めたプーチン大統領は19年5月、政府系の全ロシア世論調査センターに対し「プーチン大統領を信頼するか否か」という新たな調査項目を設けて集計させ、7割以上から信頼という回答を得た。一種の印象操作を試みたわけであるが、こうしたギミックはロシア側のメディアからも手厳しく批判され、むしろ逆効果だったようだ。

 日本はロシアとの間で領土問題(北方領土問題)を抱えている。一時は融和的なムードが広がったものの、最近ではラブロフ外相が強いトーンで日本側をけん制するなど、事態の膠着が続いている。支持率低下が顕著なプーチン政権は対日強硬姿勢を示すことで世論を味方につけようとしているようだ。

■景気低迷に拍車をかける大統領の経済政策

 プーチン熱が冷めた背景には、長引く景気低迷がある。世界有数の産油国であるロシアの経済は原油価格に大きく依存する。そのため、14年後半から進んだ世界的な原油安はロシア経済を直撃し、通貨ルーブルも急落した。ルーブル安を緩和すべく中銀が金利を引き上げたことも景気を下押しした。

 それ以前からもロシアは、クリミア情勢をめぐって欧米から経済制裁を受けていた。その結果、ロシア景気は15年から16年にかけて深刻な不況を経験した。17年から経済は成長軌道に乗っているが、景気回復のテンポは鈍いままだ。過去に比べると原油価格が依然低いことや、欧米からの経済制裁が続いているためである。

 さらに拍車をかけているのが、プーチン大統領による財政緊縮政策だ。プーチン大統領は財政再建を最優先課題に掲げ、年金支出など社会保障費の削減に加えて、軍事費の見直しなどを進めた。こうした財政再建路線に対して国民が不満を持っているため、プーチン政権の支持率は低迷しているのである。

 支持率を回復するためには財政再建を放棄して減税や給付金支給などのバラマキ政策を行えば良いわけだが、プーチン大統領はそうした手法を取ることができない。ロシアの財政は資源企業に対する課税に依存している。その資源企業の業績は原油価格に連動する。現在の原油価格ではかつてほど税収が賄えないのだ。

■バラマキよりも積立基金の再建を急ぐ理由

 加えて、ロシア特有の事情として、プーチン政権が「予備基金」と呼ばれる特殊な積立基金の再建を急いでいることが挙げられる。予備基金は不測の事態に備えて政府が積み立てている基金であり、15年から16年の景気後退期で生じた財政赤字を補填する手段としても使われた。その結果、この基金は17年末に枯渇してしまった。

 ロシア政府の信用力は低いため、国債を発行してもなかなか買い手が見つからない。また歴史的にも欧米と対立関係にあるため、欧米の影響力が圧倒的な金融市場から資金を調達することには安全保障上のリスクがある。そのためにプーチン政権はこの「予備基金」の再建を急がざるを得ないわけである。

 もっとも足元の原油価格(ブレント価格)で1バレル60ドル台半ば、14年の下落前に比べてもまだ40ドル以上低い。ロシアはサウジアラビアなどOPEC(石油輸出国機構)と連携して減産に取り組み、価格の上昇を目指そうとしているが、あまりうまくいっているとは言えないのが現状だ。

 頼みの資源企業も、輸出で得た利益の多くを脱税していると言われる。せっかく原油価格が上昇して資源企業の利益が増えても、それが国庫に入らなければ財政再建は進まない。このように財政再建の道は険しいものの、そうであるからこそ、その推進を図るプーチン大統領から為政者としての責任感がうかがえることもまた事実だ。

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最終更新:8/15(木) 12:45
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