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実は日本人の死因第3位「老衰で死ぬ」とはどういうことか

8/14(水) 12:01配信

現代ビジネス

わずか3週間で逝った父

 「父を老衰で亡くしてから、もう半年が経とうとしています。83歳だった父は重い病気を患ったこともなく、悪いところなんてどこにもなかった。ところが亡くなる3週間前から、目に見えて体力が落ちていったんです。

死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い

 私が異変に気付いたのは、今年1月のある日。いつもと変わらない朝食での出来事がきっかけでした。それまで父は決まって朝7時に朝ごはんを食べていた。メニューはいつも一汁三菜のシンプルな和食です。

 でも、その日、急に父が『今日はご飯、食べたくないな』と言い出した。父は健啖家で食べることが大好きだったので、戸惑いました。昼食の時間になっても、茶碗によそわれたご飯を一口、二口しか食べようとしない。体調が悪いのかと尋ねても、しきりに首をひねるばかり。自分でも何が起きたのかわからず混乱している表情を浮かべていました」

 こう語るのは、東京都在住の小林慎太郎さん(58歳、仮名)。実父である幸助さんを半年前、老衰で亡くしたばかりだ。

 慎太郎さんが幸助さんと一緒に暮らし始めたのは4年前。母の恵子さん(享年76)が乳がんで逝き、一人暮らしになってしまった父の身を案じた長男の慎太郎さんが同居を持ちかけてのことだった。

 「それから亡くなるまでの3週間は、あっという間に過ぎてしまった。父は日に日に衰弱していき、枯れ木のように痩せていきました。

 父が息を引き取った時、自宅で看取ってくれたかかりつけの先生はその死因を『老衰です』と診断しました。老衰というと、ただただ穏やかに、本人も含めた誰もが納得する『いい死に方』だと思っていた。ですが実際、当事者になると必ずしもそうではないんだと実感したんです」

 いまや老衰は国内の「三大死因」のひとつにも数えられるほど。厚労省が今年6月に発表した'18年の人口動態統計では、初めて脳血管疾患や肺炎を抜いて、1位のがん、2位の心疾患(心筋梗塞など)に次ぐ死因3位にランクインした。いま、日本では年間10万人以上が老衰でこの世を去っている。

 理想の亡くなり方を問われると、多くの人が「最期は老衰で死にたい」と口を揃える。だが、一度立ち止まって考えてみたい。そもそも、老衰とは一体なんだろうか。そして、老衰で亡くなるまでに、どのような過程を辿るのか。

 慎太郎さんが語るように、一般的に老衰は加齢によって体が機能しなくなり、ゆっくり死を迎えるというイメージがある。その点で、心疾患などが突発的に起きたことで24時間以内に死亡する突然死とは違う。

 老衰に、医学的な定義はあるのだろうか。厚労省が刊行している「死亡診断書記入マニュアル」を紐解いてみると、老衰は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用い」る死因だと書かれている。この時点で、すでに曖昧で掴みどころがない。老衰の定義など、あってないようなものなのだ。

 「老衰の基準というのは、死亡診断書を書く医師によってまちまちでブレがあるんです。医者の間でさえも、共通の認識や見解が出来ているわけではありません。

 いまの日本人の平均寿命は、男性が81・09歳、女性が87・26歳。その寿命と照らし合わせて、80歳後半を過ぎて亡くなった高齢者には老衰という診断をつける医者が多いのが実情です。でも、何歳以上ならば老衰だと言える明確なルールは存在しません」(病理専門医の榎木英介氏)

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最終更新:8/14(水) 15:05
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