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【イージス・アショアの不都合な真実(1)】異常な選定作業の知られざる内幕

8/14(水) 5:56配信

デイリー新潮

「神の盾」に穴という「亡国のイージス・アショア」――豊田穣士(軍事アナリスト)(1/3)

 新築のマイホームの屋根に、入居前から穴が開いていたら、どんな気分だろう。おまけにその土地を薦めてきた不動産屋が、ロクに現地調査すらしていなかったら? そんな不条理が、国防の最前線で起きつつあるという。軍事の専門家による衝撃のレポート第1弾。

 イージス・アショア。ギリシャ神話の「あらゆる邪気を祓う盾」である「イージス」と、「陸上」を意味する「アショア」。世界最強と言われ、米海軍や海上自衛隊が誇る防空の要とされるイージス艦の戦闘システムを、そのまま陸上に設置する。それは、本来の姿で導入されれば、日本の守りを一層強固にする頼れる装備になるはずだった。

 しかし今、イージス・アショア(以下、基本的には「陸上イージス」と呼ぶ)は、その根幹から揺らいでいる。根幹とは「国民の理解と信頼」、そして「防衛装備品としての能力」である。

 次々に誤りが発覚した配備候補地の地元向け説明資料。そこから明らかになった、机上の計算で物事を進めようとする防衛省の姿勢。地元説明会で居眠りをするというような、一部の防衛省職員による不誠実な態度。それらは確実に、陸上イージスに対する国民の理解を遠ざけ、防衛省に対する信頼を毀損した。そしてついに、候補地の一つである秋田県の知事が「白紙」という言葉を使うまでに至る。まさに「国民の理解と信頼」が揺らいでいるのだ。

 さらに深刻なのは、「防衛装備品としての能力」である。実は、現在導入が予定されている陸上イージスの「中身」、具体的には、“眼”となるレーダーや“頭脳”となる戦闘システムのソフトウェアについて、その能力などに大きな疑問が生じている。実際、少なくとも6千億円を超えると言われる巨額の予算を投じるにもかかわらず、現状のままでは弾道ミサイルに対処する能力しか持たず、爆撃機や巡航ミサイルから、施設を自分自身で守る能力すらないことが明らかになった。そう、もはや「あらゆる邪気を祓う盾」ではなくなっているのだ。

 その上、当初は「レーダーの製造には日本企業が参画でき、日本の技術が多く使われる」(米防衛メーカー関係者)という触れ込みだったのに、参画は見送られた。結果、日本の防衛生産・技術基盤には何ら実益はなく、むしろ関連予算のほとんどが他国に流れる事態になったのである。これらはまさに、防衛政策に関する「平成最後にして最大の謎」と呼んでもいいだろう。

 本連載では、そうした“謎”に迫っていく。その過程で、読者は数々の「不可解な事実」を知ることになるだろう。そして、連載が終わる頃には、最近露呈した様々な不祥事が、「氷山の一角」に過ぎないことも理解してもらえるはずだ。

 ただし、筆者が訴えたいのは「陸上イージス反対」ではない。より本質的な、イージスの「中身」に関する疑問についてである。「税金を原資とする巨額の防衛予算を投じて導入するのであれば、国民がより安心でき、より頼れるものにしてもらいたい」。そう筆者は訴えたいのである。それは、日本の防衛の未来を案じる数多の人々も同様だろう。なぜなら陸上イージスは、国民の命を守るものだからだ。

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最終更新:8/14(水) 10:19
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