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「自己主張できない人」「自己主張だけの人」は心理療法で治療できる!

8/15(木) 8:30配信

教員養成セミナー

上手な自己主張を  ―アサーション・トレーニング

 小学校高学年の頃、次のような状況を経験したことはありませんか。昼休みは図書室で静かに本を読みたいと思っていました。図書室に行こうとしたとき、親友の一人がやって来て、「みんなで校庭で鬼ごっこをしよう!」と声を掛けてきました。

 さて、あなたは、どうしましたか。友だちの誘いに従って鬼ごっこをしましたか、それとも最初の自分の希望通り図書室に行って本を読みましたか。多くの人は、せっかく誘ってくれたのだからと、友だちの誘いに乗ったのではないですか。もちろん鬼ごっこをしている時は楽しかったかもしれません。でも、休み時間が終わった時、やっぱり図書室に行けばよかったと少なからず後悔したりしたものです。

 このような体験は、子どもの頃だけのことではありません。大人になった今でも、先週は遊びに行ってお金も使ったし疲れたから、今週は静かに自宅で過ごそうと思っていたものの、誰かに誘われ、本心では行きたくなかったのですが、仕方なく遊びに出かけたような経験、誰もが持っていると思います。


■ 自己主張は難しい
 私たちは他者と一緒にいる状況で、自分の欲求を優先することが難しいのです。幼かった頃は、「かくれんぼをしたい」という自分の思いを頑なに主張し続け、それが通らないと「ぼく、帰る」と言い残して帰って来てしまうこともできました。でも成長するにつれて、自己主張ばかりでは生きていけないことを悟ります。ある時は自己主張をし、ある時は我慢をして、自己抑制ができるように適切な自己コントロール力を身に付けてきたはずなのです。

 でも、実際にはなかなか上手く自己主張することはできません。いつも他者の意見や立場、希望ばかりを優先して、自分のことは二の次になる。それで良いのでしょうか。自分の思いを封印し、後悔ばかりすることになって、果たして幸せでしょうか。もっと自分のことを主張しても良いでしょう。そんなことは頭では分かっています。それでもできないからこそ、大人になった今でも困っている。そんな人、結構たくさんいるのではないでしょうか。


■ 上手に自己主張をするためのトレーニング
 そうした人にお奨めなのがアサーション・トレーニング、あるいは主張訓練法という心理療法です。最初に考えておきたいのは、自己表現には3種類あるということです。1つ目は、他者を優先し自分の考えなどを伝えようとしない非主張的で不十分な自己表現です。2つ目は、自己主張だけを繰り返して他者の言うことに耳を傾けない攻撃的で過剰な自己表現です。そして3つ目は、他者の意見も聴きながら適切な自己表現ができる「アサーティブ」な自己表現です。

 もちろん3つ目の自己表現ができることが理想です。そこに向けて、さまざまな場面を設定し、ロールプレイングを繰り返しながら、効果的な自己主張の仕方を体得できるように訓練する、それがアサーション・トレーニングです。

 望ましい自己主張とは、相手の考えや意見、欲求、権利などを尊重すると同時に、自分自身の考えや欲求、権利なども大事にすることを、相手も自分も傷つけることなくはっきりと上手に伝えられることをさすのです。

 「心理療法を受ける」と聞くと、自分はそんなに重大な問題を抱えている訳ではない、治療を受けるほどではないと考えるかもしれません。でも心理療法は、今現在悩みを抱えている人だけが対象ではないのです。そうした治療的役割だけを持つものではありません。大きな災害や悲惨な事故の直後にスクールカウンセラーが派遣されるのは、不安や悲しみを少しでも軽くするための予防的役割を果たすことが目的なのです。さらには心身ともに健康な人が、深い自己理解や他者理解を図ることを目指して心理療法を受けても良いのです。これを開発的役割と呼びます。アサーション・トレーニングは開発的役割としても多く用いられている技法なのです。

著・監修 古川 聡(国立音楽大学音楽学部教授)
筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位所得満期退学。学術博士(筑波大学)。

『月刊教員養成セミナー 2019年9月号』「教育心理入門」より

最終更新:8/15(木) 9:31
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