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深淵を覗く時、真円もまたキミを覗いている!? 911 GT3 RSの色即是空ドライブとは。

8/15(木) 6:03配信

Pen Online

新型911が話題のこの時期にあって温故知新ですよ。先代991型後期のスーパーハイエンドモデル、911 GT3 RSのステアリングを握った。3日間で峠を中心に400kmほど乗ったんだけど、胸に去来するのは“色即是空”。そして個人的な「ベスト・ポルシェ」の思いを新たにしたんだな。
GT3は、ポルシェ 911シリーズ究極の自然吸気エンジンモデル。あらゆるパーツに軽量化が施され、ハードコアな走行性能が追求されているのね。RSはさらに競技性を高め、完全に体勢が固定されるフルバケットシートにロールバーを組み込み、超がつくほどの特大ウイングを搭載している。先頃、ポルシェの公式声明でも「GTシリーズの電動化は、ハイブリッドも含めて予定なし」と発表があって、熱狂的なファンは胸をなでおろしたばかり。
それはともかく、カラーリングは最近流行のライムグリーン。人気レーサー、ケン・ブロック気分でご機嫌だね。でもそのカラー(色)もまた、走行性能の前には「これ空なり」かな。

【写真を見る】固定式のフルバケットシートを搭載。

そもそもポルシェはスポーツ性能を追求するため、出力とシャシー、車両のバランスを計算し尽くし、いわゆる“チリの合わせ込み”と呼ばれる精度で組み立て完成させる。代表的なのが911シリーズで、911 GT3 RSは自然吸気エンジンならではの9000回転まで達する高回転型の美しいエキゾーストノートが魅力。ハンドリングは軽快かつフラットで、つぶさに路面の情報を伝えてくる。

ポルシェの思想を物語る、911シリーズの到達点。

絶品なのがブレーキで、効きは鋭く、ローターにパッドが接触するリアルな感触とともに、抵抗圧が瞬時に理解できてコントロール自在。まるで切れ味鋭い銘刀を携えている気分だね。シャシーはロールバーの効果もあって堅牢だし、峠ではライトウェイトな敏捷性で、抑えきれないトルクステアが発生するほど。足まわりに至ってはレーシングカーそのもので、バケットシート越しに車体の情報をビリビリと電流を流すように伝えてくる。すべてのベールを取り去った、走りの本質(コア)として体感できるのが特徴なんだ。
数あるスーパースポーツと比較すると、特筆すべきはブレーキング性能なんだけど、走行性能をグラフ化すれば、おそらくは円になるようなバランスを描く。この円が大きくなればなるほどハードコアな走行性能になるわけだけど、911シリーズはエントリーモデルでも、ほぼ非の打ちどころのない円を描いたバランスをもっている。大なり小なり大きさの違いはあっても、ポルシェの思想とは、そのバランスがどこまで真円に近づけるかをストイックに追求している気がするのね。
峠を911 GT3 RSで走り続けていると、助手席の存在も忘れ、マインドは山河を無心で駆け抜ける移動体そのもの。たとえ路地の曲がり角でもその意識と喜びを感じられるし、2日目にはコックピットが身体に馴染んで離れがたくなる。そして他のクルマでは味わえないバランスの体感値が、メートル原器のように身体に刷り込まれていくんだな。それこそ試乗途中で知人のクルマに乗った時、そのエアサスの動き方や路面入力のいなし方までが手に取るように感じられたんだ。
新型911もまた、より真円に近づくようなアップデートがされているはず。つまり「最新のポルシェが最良のポルシェ」ということが、よくわかった体験だったんだよね。

文:青木雄介

最終更新:8/15(木) 6:03
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2019年 09月15日号

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