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【第235回】FitEarハイブリッド第1期最終回!静電型トゥイーター+ダイナミックな「FitEar DC」登場!

8/15(木) 7:00配信

PHILE WEB

■FitEarハイブリッド第1期最終回!

2015年秋のヘッドフォン祭にて発表の「FitEar Air」以降、FitEarは同社ならではのアプローチでハイブリッドドライバー構成に取り組んできた。「Titan」「Air 2」「EST」と各モデルがそれぞれの独自性、それぞれの音で話題を呼んだことは、イヤホンファンの記憶にも鮮明なことだろう。

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そのFitEarからさらに新たに発表されたのが「FitEar DC」だ。先のポタ研で受け付けられた先行テスト販売分が、この8月中旬より順次出荷開始。そこからのフィードバックも反映した上で、年末から年明けにかけて正式発売の見込みという。

須山氏曰く「FitEar Airから始まったハイブリッド機も、このFitEar DCで一旦打ち止めです」とのことで、このモデルにて同社のハイブリッド構成への挑戦には一旦の幕が降ろされるようだ。

今回はその「FitEarハイブリッド第1期最終回」的なモデルとなるFitEar DCを、先行サンプルにてレビューさせていただこう。

■FitEarハイブリッドのドライバー構成まとめ

そのFitEar DCに採用された今回のハイブリッド構成は「フルレンジインラインダブルダイナミックドライバー+静電型トゥイーター」だ。そこも含めてまずは、このモデルの位置付けを探り、そしてFitEarハイブリッド第1期を振り返る意味からも、FitEarハイブリッド全モデルのドライバー構成をまとめておこう。

まずは発売時期順に並べるとこんな感じ。

そして要素ごとに整理するとこんな感じだ。

こちらの表を見ると、まずは、
・Air:ダイナミック+BA
・Air 2/Titan:ダイナミック直列2基+BA
・DC:ダイナミック直列2基+静電
・EST:BA+静電
の4系統に分けられることがわかるかと思う。それぞれ大まかには以下のような内容、狙いの構成だ。

【Air】フルレンジダイナミック+BAトゥイーター
完全密閉型シェルにおいても力を発揮するフォスター電機製ダイナミック型ドライバーを、耳孔内の空気容積を多く確保できるショートレッグシェルと組み合わせることで、フルレンジとして十分な特性を確保。さらにBAトゥイーターで高域を補正することで仕上げ。

【Air2/Titan】フルレンジダイナミック直列2基+BAトゥイーター
メインのダイナミック型に加え、対となってその動作を補助するもう1基のダイナミック型を追加し、リニアリティやダンピングの向上を図ったドライバー構成。トゥイ
ーターはBA。

【DC】フルレンジダイナミック直列2基+静電型トゥイーター
フルレンジはAir2/Titanと同様のダイナミック直列2基。トゥイーターはESTと同様の静電型。

【EST】フルレンジBA+静電型トゥイーター
フルレンジ動作のBA型ドライバーに高域の質感表現などを高める静電型トゥイーターを上乗せ。

■DCは「EST系列」ではなく「Air2/Titan系列」と見るのが妥当?

つまりDCは、
・フルレンジ側に注目すればAir2/Titan系列のダイナミック
・トゥイーター側に注目すればEST系列の静電型
となる。

そうすると「静電型」にはやはりインパクトがあるので、そちらに引っ張られて、
「DCはESTのフルレンジ側をダイナミックに変更したバリエーション」
という印象を受ける方もいらっしゃるかもしれない。

しかし、これは同社の見解ではなく筆者の判断であるが、FitEar DCについては、
「Air2/Titanのトゥイーターを静電型に変更したバリエーション」
と理解する方が妥当ではないかと思う。

音楽再生帯域の大半を担当するのは「フルレンジ」ドライバー。そちらが共通することの方が、いくら特徴的な静電型とはいえ、補助的な役割であるトゥイーターが共通することよりも大きいはずだ。

とはいえ、それは「機構的にはそう理解するのが妥当か」というだけのこと。DCはAir2系列の最新上位モデル!なんてことではない。「既存ラインナップのすべてと対等に比較するべき、新たなバリエーション」という受け取り方で検討するのがよいだろう。

■須山氏の語る設計意図

一方、実際の開発や設計の意図は、FitEar須山氏ご自身がTwitterで語ってくれている。内容から抜粋しまとめると、ポイントは以下3点。

▽【ESTとの比較】BAフルレンジでは、静電型トゥイーターの動きの軽やかさに対して相対的に追いつけない場面もあったところ、インラインダブルダイナミックドライバーとすることで時間軸変化への追従性を高めた。

▽【Air/Titanとの比較】BAトゥイーターではピーク抑制のために音響フィルターが必要だったが、静電型ではその必要がなく、より音抜けがよくスムーズで透明感の高い表現が可能となった。

▽【静電型トゥイーターについて】ESTでは静電型トゥイーターを7kHzあたりから上の帯域で使っているが、DCではさらにフラットな特性を得られる10kHzあたりから上の帯域で使うことで、高域の伸びやつながりをさらに滑らかなものとした。ただしそのために全体の能率はFitEar製品としては低めとなり、従来よりもDAP等のボリュームを上げる必要がある。

■音質レビュー!キレッキレのレスポンスとナチュラルな質感!

それではいざ試聴!まず、Air2およびESTと随時比較しながらの印象をざっくりまとめると、
「高域の質感表現は絶妙のタッチ!」(ESTほどナチュラルではなく、Air2/Titanほどハードでもない)
「中低域レスポンスは(Air2と同じく)キレキレ!」
「タイトな音像で余白余裕のある空間表現!」
といった感じだった。

最初に、悠木碧さん「レゼトワール」や相対性理論「夏至」の女性ボーカルやハイハットシンバルなどで、高域のシャープな成分をチェック。既存モデルだと、Air2はそれらの鈴鳴り感を生かしてカチッと硬質に届けてくれるタイプ、ESTは適度にほぐしてしっとりとしたタッチで届けてくれるタイプだ。

DCも基本的には、フルレンジドライバー側が共通するAir2と同じく、適度に硬質なタッチが持ち味。しかし静電型トゥイーターとのコンビネーションによってか、その硬さが絶妙に和らげられており、より自然と感じられる音色になっている。

中低域の傾向は、バンドサウンドの早見沙織さん「メトロナイト」やクラブサウンドのRobert Glasper Experiment「Human」などで確認。音の立ち上がりの速さ、余計な余韻を残さずすっと抜けていく音離れの良さなど、総じて音のキレは素晴らしい。ここはAir2等と共通のインラインダブルダイナミックドライバー構成の威力が大きいだろう。

中低域のキレは低音楽器だけではなく、例えばラップ的なスタイルのボーカルなどでも実感できるかと思う。クラブ系の超低域まで沈み込む重低音を全く緩ませることなくタイトでいてディープに描き出してくれるところも見事。

また、ESTはベースやドラムスもスムースな感触なのに対して、こちらDCはガツンとしたアタックと芯によって荒々しさや力強さも存分に表現。よりロック的な印象だ。

そして、音が無駄に膨らむことも無駄に滞空することもなく、キレキレで抜けていくおかげで、その空間表現には十分な余白が生み出されている。その余白が背景となることで、音の細やかな響きや空間系エフェクトによる処理までの見晴らしも良好。

■Air2/Titan好きもEST好きも要チェック!

FitEar DCのこのサウンドは、既存のAir2/TitanおよびESTと並べた場合、ユーザーにとってどのようなポジションになりそうだろうか?

Air2/Titanの音が好みな方にとっては、その基本は維持しつつ主に高域側の感触に自然さを増したバリエーションとも言えるDCは、実に悩ましい選択肢になってくることだろう。ESTの音が好みな方にとっても、EST的な滑らかさに少し寄せつつもESTにはないガツンとくる迫力を備えたDCは、ESTとの使い分けを考えた時に、ちょうどよく魅力的なのではないだろうか。

もちろん、既存のFitEarユーザーのみがチェックするべきモデルだなんてことではない。ダイナミック2基直列構成ならではのキレのあるパワフルさは、イマドキのロックサウンドやエレクトリックサウンドなどに特に合う。それでいて静電型トゥイーターによって整えられた高域側には聴きやすさもあり、ボーカルの感触も素直だ。

つまりこのFitEar DC、現代的オールラウンダーとしての完成度が普通に高い。良いイヤモニを欲するすべての人に検討してみてほしいモデルだ。

そしてFitEar DCによって“FitEarハイブリッド第1期”が見事な大団円で最終回を迎えた今、この台詞も言わずにはいられない……
FitEar先生の次回作にご期待ください!
注)打ち切られてません

◇◇◇

高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi
趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。

高橋 敦

最終更新:8/20(火) 11:00
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