ここから本文です

【法律相談】死んだ妻の使い込みが発覚 夫に責任は?

8/16(金) 7:00配信

NEWS ポストセブン

 亡くなった人物に財産があれば、近親者はそれを受け取る権利があるが、“負の遺産”があっても誰かが継承することになる。死んだ妻に損害賠償債務が課された場合、夫は払う義務はあるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 妻の急死後、義兄が訪ねてきて彼女が老人施設に入所中の母親の貯金など600万円を勝手に使い込んでいたというのです。妻が義母のお金の管理を任されていたのは知っていましたが、まさか使い込みをしていたとは……。義兄は私に返してほしいと主張。やはり私が返金しなければいけませんか。

【回答】
 使い込みが事実だと仮定します。奥さんは義母さんの財産を侵害した不法行為をしたことになり、使い込んだお金を賠償する責任がありました。しかし、夫婦の一方が第三者に対して不法行為をして損害賠償を負う場合に、他方配偶者が責任を負うかといえば、その不法行為を一緒にしたか、もしくは手助けなどをして共同不法行為者になる場合でなければ、責任を負うことはありません。

 例外的な場合としては、使い込んだお金をソレと知っていながら、あるいは容易にわかるのに、気付かずにもらったりすると、被害者の損失と因果関係のある利得を法律上の原因を欠いて受け取ったと解され、被害者に不当利得として返還を命じられることもあります。こうした状況でなければ、被害者である義母さんから、直接損害賠償請求や不当利得返還請求などを受ける心配はありません。

 ただし、それだけでは安心できません。奥さんの義母さんに対する損害賠償債務は、奥さんが亡くなると、相続債務として相続人に引き継がれるからです。

 あなたは相続人ですから、使い込んだことを聞かされたまま何もしないでいると、法定相続分(子がいたら半分)の範囲で、奥さんの賠償債務を相続します。奥さんに遺産がなければ、債務だけを抱え込むことになります。その場合でも、相続開始を知ってから、3か月以内に相続放棄すると、債務の相続を免れることができます。

 もし、3か月経過後に使い込みを知った場合でも、奥さんに何も資産がないと思い、相続放棄の手続をしなかったのであれば、それからでも相続放棄は可能です。まずは使い込みの実態を確認し、相続放棄の要否を判断しましょう。ただ、奥さんの遺産を処分していると、相続を承認したことになるので「相続放棄」はできません。

【プロフィール】竹下正己●1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2019年8月16・23日号

最終更新:8/16(金) 7:00
NEWS ポストセブン

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事