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伝説のアナリストの分析…日本が生きる道は「最低賃金の引き上げ」しかない

8/16(金) 12:13配信

PHP Online 衆知(Voice)

人口激減に直面する日本がとるべき道が議論され、模索されるが明確な道標が見えているとは言い難い。

発売中の月刊誌『Voice』9月号では日本在住30年、ゴールドマン・サックス「伝説のアナリスト」であるデービッド・アトキンソン氏が、国民の生産性を高まるために全国一律の最低賃金引き上げが急務だ、と説いている。その理由とは。本稿では同誌よりその一節を紹介する。


※本稿は月刊誌『Voice』(2019年9月号)、デービッド・アトキンソン氏の「日本の生きる道は最低賃金引き上げしかない」より一部抜粋・編集したものです。

聞き手:編集部(中西史也)

金融緩和や消費増税は小手先の政策

――著書『日本人の勝算』では、人口減少に直面する日本が生産性(1人当たりのGDP=国民総生産)を上げるための方策が述べられています。安倍政権は大胆な金融緩和による経済成長をめざすと同時に、社会保障の財源確保のための消費増税を予定しています。安倍政権が推進する政策をどう評価しますか。

【アトキンソン】 安倍政権の経済政策は端的にいって、やらないよりはやったほうがよいけれど小手先の措置が多いことは否めません。

安倍首相は「デフレ脱却」を掲げ、日本銀行の黒田東彦総裁により2%のインフレ目標を設定、大規模な金融緩和を実施しました。しかし物価上昇率は2%には届かず、デフレ脱却は果たせていない。

たしかに、アベノミクスによって円高が是正され、株価は大幅に上昇しましたが、今後の舵取りを誤ると、再びデフレに陥るリスクが潜んでいます。

今年10月に予定している消費税率10%への引き上げも、じつは瑣末な話にすぎません。消費増税をするのは一般に社会保障に使う税収を確保するため、といわれます。

しかし、そもそも日本の社会制度の問題は税率ではなく、日本人の所得と個人消費が低いこと。

日本は人口減少という難題を前にしているのに、本当にやるべきことから目を背けています。

――どういうことでしょうか。

【アトキンソン】 日本では子供の数が年々減っていて、1950年に全人口の55%だった24歳以下の人口は、2030年には18%まで減少します。

日本を除くG7(先進7カ国)は、2060年までに人口が約14・9%増加するにもかかわらず、日本は32・1%減。同じく人口が減る韓国でさえ5・6%減であり、日本の下げ幅は桁違いに大きい。

IMF(国際通貨基金)が2014年に発表したデータによると、人口増加はインフレ率を大きく引き上げ、人口が減るとデフレにつながると分析されています。個人消費にも大きく影響します。

たとえば、国に2人の労働者がいて、いずれの年収も420万円だと仮定してみましょう。2人が給料全額を消費したとすると当然、国の個人消費は年間840万円です。

それが2人から1人になれば、420万円分が消えます。では、1人減っても元の個人消費を維持するためにはどうすればいいでしょうか。

――1人当たりの給料を420万円から倍の840万円に上げればよいですね。

【アトキンソン】 そうです。この前提に基づけば、日本政府が何よりも取り組むべきは、1人当たりの生産性を向上させることです。

しかし、人口の増加によって自然と経済成長していた時代と違い、人口が減っているいまは、国が主導して政策を実行する必要があります。

そこで私が強く主張しているのが、全国一律で最低賃金を毎年5%ずつ引き上げる施策です。日本はここ20年間で生産性が上がったにもかかわらず、労働者の賃金が下がり、企業の内部留保は膨らんでいます。

一方、「World Economic Forum」の2016年のランキングで、日本の労働者の質は世界4位に位置している。

つまり、労働者の評価は高いのに、経営者はその潜在能力を発揮させていない上、払うべき給料を払っていないのです。

人口減少と同様、最低賃金の低さもデフレの大きな要因になります。人口減少による競争激化に対応するために、経営者はコストを削減して、人件費を下げようと試みるでしょう。

世界的に低い日本の最低賃金まで、企業は従業員の給料を下げられるわけです。賃金の引き下げはデフレスパイラルの引き金となるため、最低賃金の低さがデフレの要因になるといえます。

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最終更新:8/16(金) 12:14
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