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「パスソナー」。サッカー界の外で進化する新概念が可視化する世界

8/16(金) 12:12配信

footballista

TACTICAL FRONTIER

サッカー戦術の最前線は近年急激なスピードで進化している。インターネットの発達で国境を越えた情報にアクセスできるようになり、指導者のキャリア形成や目指すサッカースタイルに明らかな変化が生まれた。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つのは、どんな未来なのか? すでに世界各国で起こり始めている“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代サッカーの新しい楽しみ方を提案したい。

文 結城康平


 フットボール統計の世界は飛躍的な進歩を遂げており、多くのクラブがデータ分析の有用性を認めている。デンマークではミッティランが統計学的な手法を取り入れ、データ分析のパイオニアとなる。先鋭的な取り組みを続ける彼らは「フットボール版マネーボール」と称され、データ革命における成功例を示した。フットボール分析サイト『StatsBomb』のCEOを務めるアメリカ人テッド・ナットソンは「フットボール界におけるデータ分析の活用は、始まりに過ぎない」と主張する。多くのクラブがデータアナリストを雇用する中で、重要となっているのが「データの提示方法」だ。明確にデータ分析から読み解くべき意図を伝えるのは簡単ではなく、分析の活用に苦慮しているクラブも少なくない。

「ゴール期待値」と「パスマップ」による変化

 以前もこの連載で取り上げた「ゴール期待値(xG)」は、すでに『BBC』のハイライト番組「マッチ・オブ・ザ・デイ」や『スカイスポーツ』の「マンデー・ナイト・フットボール」にも導入されており、一般の視聴者にとっても身近な分析になりつつある。従来のデータ分析との大きな違いは、シュートの位置や回数が「一目瞭然」ということだろう。単なる数値の羅列ではなく、ピッチ図上に描かれた点の大きさと位置でシュートの「期待値」や「位置」を示す形式は、従来から重視されているポゼッション率と比べても視覚的であり、スムーズな理解を可能にする。

 そのような「図示」が重要視されていく流れの中で、フットボール分析の世界で注目を浴びているのが「パスマップ」だろう。これは端的に説明すれば、パスの出し手となる選手と受け手となる選手の位置関係や、選手間でのパス本数などを含む情報をピッチ図に示したものである。このパスマップにもいくつかの種類があり、おそらく最初に使われ始めたのが「1本ずつのパスを矢印で表したマップ」だ。これは動き回る選手が点として表示されており、それぞれのパスが矢印で表現されている。

 ただし、この方法では特定の選手間で交換されたパスを表すことが難しかった。さらに発展したパスマップは、イタリアの現代的なWEBメディアとして知られている『ウルティオ・ウオモ』の記事でも散見される「平均的な選手のポジションを示しながら、選手間のパス本数を線や矢印の太さによって可視化したマップ」だ。このスタイルのパスマップが使われるようになったことで、チームのパスネットワークが明確化。どのゾーンで多くのパスが交換されているかが明確になったのは、ビルドアップや攻撃面の分析などに活用されるようになっていく。

 もう1つは、パスの方向性が矢印で区別されているものだ。これは太さの違う矢印を使いながらも「A→Bのパス」と「B→Aのパス」を明確化している。フットボールにおいて「チームの攻撃」の核となるパスネットワークの分析に注目が集まっていくのは、ポジショナルプレーのような原則が注目されていくことに伴う自明の理だったのかもしれない。

 前述した「ゴール期待値」と同様に、「パス期待値」というものも存在する。これは主要因として「シュートを撃つ位置」からゴールの期待値を算出しようとする「ゴール期待値」よりも若干複雑な概念だ。ピッチを複数のエリアに区切り、「エリアAからエリアBへのパス」の期待値を各エリアで算出。このようなパス期待値によって、チームや選手が「期待値を超えるだけのパスを繋いでいるのか?」という疑問に答えていく。パスの中でも比較的データ量が少なくて済み、数値化が容易なのは「アシストパス」だろう。ゴールに繋がりやすいパスの種類を分析し、期待値を算出するのが「アシスト期待値(xA)」。同様に、チャンスを創出するパスを数値化した「パススコア」という手法も使われている。

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最終更新:8/16(金) 12:29
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