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フェラーリの4人乗り&フロントV12はアリ? GTC4ルッソはビックリするほど快適なスーパーカーだった!(公道試乗記)

8/16(金) 20:43配信

GQ JAPAN

フェラーリの4シーター・クーペ「GTC4ルッソ」に今尾直樹が試乗した。V12エンジンを搭載するフェラーリの魅力とは?

【写真を見る】最高速度は335km/hだけどラゲッジルームはワゴン並!

贅沢な空間

フェラーリ「GTC4ルッソ」をピックアップすべく、前日預かったカギを手に地下駐車場に到着すると、フェラーリばかり4台ほども並んでいる。フェラーリ・ジャパンの駐車場だから当たり前だ。GTC4ルッソはその4台の端っこで、ルッソの助手席側はスペースが空いているけれど、運転席側には「488GTB」だったか「ポルトフィーノ」だったか、いや、「812スーパーファスト」だったかもしれない、ともかくマラネロのサラブレッドたちが眠っていた。そのとき私の頭のなかをいっぱいに占めていたのは、ルッソにいかにして乗り込むか、ということだった。運転席側からだって乗れるかもしれないけれど、狭いニッポンの駐車場、そんなに急いでドアをぶつけたらどこへゆくこともできない。

最近のフェラーリは、アスリートのみなさんが大型化しているのを映し出しているみたいにどれもでかいけれど、GTC4ルッソはとりわけでかい。全長4922mm、全幅1980mmという巨体で、ホイールベースは2990mmと、ほとんど3mある。なのに、乗降用のドアは2枚しかない。

たぶんほかのひともそうすると思うけれど、私は隣のスペースが空いている助手席側のドアをガバッと開けて乗り込むことにした。フェラーリを買うときには広い駐車場を用意しよう。そう思う私だった。ま、とくにその予定はないけれど。

「グリジオ・シルバーストン」という、フェラーリとしては控えめなシルバーのドアを開けると、鮮やかな明るいブラウンのルッソ(イタリア語で「贅沢」)な世界が広がっていて、私がイタリア人だったら、“ワオッ”と、小さく叫んだに違いない。

シート形状はSF映画の宇宙船だとかエヴァンゲリヲンのデザインだとかを思わせるのはどうかと一瞬思ったけれど、自分が着座してしまうと見えなくなったので、そう思ったのも忘れてしまった。考えてみれば、鉄腕アトムの誕生が2003年、『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』の舞台が2015年とすでに過去である。『ブレードランナー』と『AKIRA』がおなじ2019年、つまり今年で、ようするに現在は未来なのである。でもって、もうすぐ民間による団体宇宙旅行も始まろうというのだ。

フェラーリ、というかピニンファリーナはこういうSFチックなデザインのシートを1970年代のBB(ベルリネッタ・ボクサー)あたりから提案している。ようやく時代が追いついた、というべきなのかもしれない。

コクピットのデザインは先代にあたる「FF」から、エアバッグが小型化されたステアリングホイールやエアコン、10.25インチのタッチスクリーンも一新されている。されているけれど、操作類はこれまでと変わらず、直感で動かせる。

全高は1383mmと、たとえば、メルセデス・ベンツEクラスより70mmほども低い。4シーターとはいえ、ルッソはフェラーリである。運転席に座って前のみを見ていると、4座であるのを忘れる。後ろを振り向くと、鮮やかなブラウンのSFチックなシートがふたり分、そこにあってハッとする。オーナーになったら、その席にだれかを座らせることもあるだろう。家族にせよ友人にせよ、ルッソの乗員たちにとって、限りなくドルチェ・ヴィータなひとときになるに違いない。

ステアリングに設けられた真っ赤な丸いボタンを押してマラネロ謹製V型12気筒エンジンを目覚めさせる。静かな土曜日の朝。地下駐車場にはひとっこひとりいない。爆音を轟かせると、V12は静かにアイドリングを始める。そろり、とアクセルを踏み込み、地下駐車場を走り始める。巨大な地下駐車場がものすごく狭く感じる。12気筒をフロント・アクスルよりも内側におさめたGTC4ルッソは、いわば檻のなかの猛獣、ライオンとかトラとかオオカミなのである。それはたいへんストレスフルなのである。もっと広い、野原みたいなところを思いっきり全開で走りたい!

屋外へ出ると、青空が広がっている。首都高速・池尻まで一般道を走る。6262ccの65度V12は静かにハミングしている。690psの最高出力を8000rpm(!)で、697Nmの最大トルクを6000rpmで生み出す、極上の自然吸気エンジンである。

一般道ではしかし、本番に備えて楽屋で寛いでいるオペラ歌手のごとく、であるに過ぎない。最大トルクの80%は1750rpmで紡ぎ出す。50km/hは7速DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)の6速で1000rpm程度である。室内にはムウウウウウウウウウウウウウッという男声合唱団の重奏低音が控えめに流れている感じで、そこからアクセラレーターを軽く踏み込むと、音が澄んでくる。次のドラマへの期待が高まる。しかれども、軽く踏み込むだけですぐに前走車に追いついてしまい、それ以上、右足に力を込めることはできない。

この段階でわかるのは、V12の高感度ぶりだ。まるで呼吸するように加速する。そのレスポンスときたら、右足とエンジンが完璧に一致している。シンクロ率100%である。

乗り心地はすばらしい。フェラーリはデルファイが開発した「マグネライド (MagneRide)」なる電子制御サスペンションを「599」あたりから採用していて、これの独自改良版である「マグナライド(Magnaride) SCM-E ダンパー・コントロール」がGTC4ルッソには与えられている。この電子制御サスペンションがいい仕事をしていて、ちょっぴりSUVっぽいようなゴツゴツ感があるといえばあるけれど、前245/35、後ろ295/35のZR20という超扁平極太巨大タイヤを履いているのをうっかり忘れさせる。SUVっぽいといっても、野蛮さとか西部劇っぽさとは、まったくもって無縁。ひとことでいえば、GTスポーツカーっぽいのである。エンジン、ギアボックス、サスペンションを統合制御する「マネッティーノ」でコンフォートを選んだ状態での話である。

車重はカタログ値で1920kgある。絶対的には重い。にもかかわらず、そういう重さを感じさせない。軽々しくはない範囲でのステアリングを含む各種操作系の軽さと、なによりマイティな12気筒が4座の4WDシューティング・ブレークという異形のプラシング・ホースを、名門一族の一員たらしめている。

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最終更新:8/16(金) 20:43
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