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【イージス・アショアの不都合な真実(3)】現行案が抱える3つの重大な問題

8/16(金) 5:56配信

デイリー新潮

「神の盾」に穴という「亡国のイージス・アショア」――豊田穣士(軍事アナリスト)(3/3)

 イージスとは、ギリシャ神話に登場する“あらゆる邪気を祓(はら)う盾”だ。安倍総理が「どうしても必要」と訴えた国防の切り札だが、蓋を開ければ、地元の反対、能力不足、膨張する予算――。「神の盾」の実態は、あらゆる災厄が詰まった「パンドラの箱」だったのか? 

「意見ありません」――。

 イージス・アショアの「構成品選定諮問会議」の議事録には、出席者たちの一見無機質な言葉が並ぶ。2018年7月17日15時30分。事務方のトップである事務次官以下、防衛省・自衛隊の幹部が、市谷にある防衛省本庁舎11階の一室に集まった。イージス・アショア(以下、「陸上イージス」とする)の「中身」(構成品)の選定案について、最終的な方向性を確認するための会議であった。

 会議の席上、陸上イージスの運用を担う陸上自衛隊のトップである陸上幕僚長(当時)は、次のように発言している。「今後、本構成品を取得するにあたり、今回提案を受けた金額の範囲内において、所要の性能等を担保することが極めて重要であると考えています」。そして、まるで何かを察していたかのように、こう付言した。「提案内容が履行されない場合には、取得の取りやめも含めて検討することが必要であると考えています」。

 陸上幕僚長の発言を受け、会議に出席していた幹部達は、次々に「意見ありません」と追認。そして、最終的に“現行案”を「適切」とする旨の答申を、議長たる事務次官(当時)が決した。この現行案こそ、第2回で取り上げた、ロッキード・マーティン社製のレーダー「LMSSR(エルエムエスエスアール)」を採用する案である。会議時間はわずか15分だった。公開されている議事録からは、(1)レーダーの性能等が提案を受けた金額の範囲内で実現されることを重視していること。(2)状況次第では取得の取り止めもあること。(3)以上の2点を踏まえた上で各幹部も了解したこと、が見えてくる。

 それから1年。今、陸上イージスは大きな岐路に立たされている。度重なる防衛省の不手際により、配備候補地の不満が爆発しただけではなく、先の通常国会の終盤では、水面下で燻ぶり続けていた構成品の選定に関する疑問も噴出した。選定後には、当初見込まれていた日本企業の製造参画が見送られるなど、現行案にとって都合の悪い新情報も次々と明らかになった。状況が大きく変わった今、本当に、このまま突き進んでよいのだろうか。今回はこの点について考えるべく、現行案で進んだ場合、一体どのような事態が待ち受けているのか、現時点で判明している事実や情報を元に明らかにしたい。

 今年5月、防衛省は、陸上イージスの配備候補地において行った「電波環境調査」の結果を公表した。この調査では、レーダーから実際に電波を出し、複数の地点で電波の強さを計測することで、人体や電子機器などへの影響について確認したという。結果、防衛省は、いずれも「影響なし」と評価している。

 ただ、この調査には不都合な事実がある。実は、調査で使用したレーダーは、導入を予定する「LMSSR」ではないのだ。というのも、そもそもLMSSRは、現時点でまだこの世に存在しない。防衛省の説明によれば、LMSSRは、これから約5年間で製造し、その後、性能の確認等を行う予定だという。つまり、陸上イージスで採用する実物のレーダーを使った電波環境調査が出来るのは、少なくとも2024年度以降なのである。

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最終更新:8/16(金) 5:56
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