ここから本文です

【イージス・アショアの不都合な真実(3)】現行案が抱える3つの重大な問題

8/16(金) 5:56配信

デイリー新潮

実際の電波は100倍!?

 そこで防衛省は、LMSSRの代わりに、陸自が保有する中距離地対空誘導弾(自衛隊では「中SAM(サム)」と呼ぶ)用のレーダーを用いて調査を行った。だが、ある防衛省関係者は、次のように本音を吐露する。「(この調査は)実際には意味がない」。なぜか? 調査で使用した中SAM用のレーダーと陸上イージス用のレーダーとでは、電波の強さを意味する「出力」が違い過ぎるからだ。

 今回使用した中SAM用レーダーの探知距離は、一説によると数百キロ。一方、陸上イージス用のレーダーはその約10倍、数千キロ先の目標を探知できるとされている。レーダーの電波は、進む距離が延びるほど減衰してしまう。このため、10倍の探知距離を実現するには、それより遥かに強い電波を出す必要がある。レーダー技術に詳しい専門家によれば、「陸上イージス用レーダーの出力は、調査で使用した中SAM用レーダーの100倍は強い」という。つまり、陸上イージスのレーダーからは、調査で使用されたレーダーとは次元が異なる強さの電波が出るのだ。

 要するに防衛省は、実際に配備されるレーダーで調査せず、言い換えれば、実際に使用される電波の影響を現地で計測せずに、「理論値」と「机上の計算」をもって「LMSSRの電波は安全」である旨、宣言しているのである。どこかで見たような構図だが、果たして、それでよいのか。

 想像してほしい。自宅から徒歩10分のところに、大きなレーダーが設置されることになったとする。役人がやってきて、「調査の結果、お宅にはレーダーによる悪影響はないと思われます。ちなみに、調査では、実際に設置するレーダーとは違うレーダーを使用しました。実際のレーダーは100倍強い電波を出します。でも、理論上は安全なので、心配しないで下さい」と説明されて、あなたなら納得できるだろうか。

「精緻な数字、正確なデータで丁寧な説明を行って頂きたい」。7月3日、陸上イージスの配備候補地の一つである山口県の村岡嗣政知事は、そう岩屋毅防衛大臣に対して要請した。配備候補地の選定方法などに疑義を持たれている今、この期に及んで、各種の調査や検討を机上で済ませるわけにはいかないはずである。ましてや、場合によっては人体にも影響を与えうるレーダーの電波に関する調査についてはなおさらだ。防衛省が本当に「正確なデータで丁寧な説明」をしようとするならば、理論値ではなく、レーダーの電波を「実測」することが求められる。この場合の「実測」とは、「実際に配備されるレーダーを使って、実際に使用されるときと同じ出力で電波を出し、その影響を計測すること」である。しかし、製造されるのは5年後だというレーダー「LMSSR」では、それが出来ない。よって、現行案では、今後の地元説明において、必ず壁にぶつかるだろう。

2/4ページ

最終更新:8/16(金) 5:56
デイリー新潮

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事