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【イージス・アショアの不都合な真実(3)】現行案が抱える3つの重大な問題

8/16(金) 5:56配信

デイリー新潮

“型落ち”のソフトウェア

 たとえ地元の反対を押し切って配備を強行したとしても、このままでは肝心の能力にさえ疑問符が付く。

「現時点ではBMD(弾道ミサイル防衛)に特化(する)」。18年7月、陸上イージスの能力の方向性について問われた防衛省関係者は、そう回答した。また、今年6月、もう一つの配備候補地である秋田での住民説明会でも、「(陸上イージスに)巡航ミサイル対処機能は持たせない」と、防衛省職員が明言したという。

 これらは何を意味するのか。そう、防衛省が認めているだけで4千億円を超える予算が投じられる陸上イージスは、現行案のままでは、弾道ミサイルに対処する能力しかない。つまり、巡航ミサイルや航空機などによる攻撃に対しては、施設を自分自身で守る能力すらないのである。実際、防衛省の公開資料によれば、陸上イージスは、「あらゆる邪気を祓う盾=イージス」を標榜しておきながら、有事等の際には、他の地対空ミサイル部隊に守ってもらう段取りとなっている。

 ここで一つの疑問が浮かぶ。軍事アナリストである筆者でも、自衛隊が近い将来、地対空ミサイル部隊を増強するという話は聞いたことがない。地対空ミサイル部隊の数は変わらない一方、陸上イージス2基の配備により、彼らが防護すべき施設は新たに2カ所増えることになる。結果的に、日本のどこかが手薄になるのである。「盾」を手に入れたら、代わりに別のどこかに穴が開くというのは、何とも皮肉な話ではないか。

 陸上イージスが弾道ミサイルにしか対処できない原因は、予算不足を除けば二つだ。一つは、“眼”となるレーダー「LMSSR」である。実はこのレーダー、陸上イージスとは異なる用途で開発されたレーダーの技術を元に造られるという。米国では、20年、LRDR(長距離識別レーダー)という超大型の警戒管制用レーダーがアラスカに配備される予定である。LMSSRにはこのLRDRと同様の技術が使われるとされる。しかし、このLRDRは、遠くのもの、特に弾道ミサイルを発見し、識別することに主眼を置いたレーダーである。つまり、弾道ミサイル以外にも巡航ミサイルや戦闘機など、あらゆる空からの脅威を見つけた上で、自ら迎撃ミサイルを放って撃破するという、本来の陸上イージスのコンセプトとは、そもそも異なる構想の中で造られたものなのだ。

 もう一つの原因は、陸上イージスの“頭脳”となるソフトウェアだ。この点は、普段使用するパソコンをイメージして頂ければ理解しやすいだろう。パソコンの機能は、メモリなどのハードウェアも要素として重要だが、どのようなソフトウェアをインストールするかに大きく左右される。世界最強と言われるイージス・システムも同様で、どのようなソフトウェアを使用するかによって、機能に差が出る。当然、新しいソフトウェアを使った方が機能も、使い勝手も良いと考えるのが普通だろう。

 ところが、不可解なことに、陸上イージスの場合は違うらしい。防衛省は、選定の結果、最新のソフトウェア「ベースライン10」も選択肢として提示されていたにもかかわらず、ひと世代前のソフトウェア「ベースライン9」を陸上イージス用として採用したのである。「ベースライン10」は23年に運用開始予定で、日本の陸上イージスの配備は25年度以降の見込みである。レーダーについては、5年後まで製造されないものをわざわざ選んでおきながら、陸上イージスの“頭脳”に関しては、なぜか、配備する頃には型落ちすることが決まっているソフトウェアを導入するのだ。

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最終更新:8/16(金) 5:56
デイリー新潮

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