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世代間ギャップが埋まらず創業150年の旅館破産

8/16(金) 17:00配信

日経ビジネス

 江戸時代から150年続く山口県長門市の老舗旅館、白木屋グランドホテルが2014年1月に破産した。7代目社長になるはずだった元専務の平井真輔氏(仮名)は、会長の伯父と社長の父の下、経営再建に奔走した。だが、世代間の考え方の違いで改革の速度が遅れた。後編の今回は、破綻の危機が迫る中でも、世代間で意見対立が続いていた内実を語る。(前回の記事「なぜ創業150年の旅館は破産したのか」は関連記事を参照)

【写真】2014年まで営業していた白木屋グランドホテル。客室数は118で地元でも屈指の規模だった(写真/森本勝義)

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 伯父や父の反対を押し切って、できるところから白木屋(しろきや)グランドホテルの改革を私は進めました。個人客の選択肢を増やそうと、従来10種類だった宿泊プランを40種類にしました。核としたのは料理。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の料理部門で、 20年以上トップテン入りを果たしたことがある水準だったからです。

 地元の食材を使った懐石料理、女性向けにカロリー計算された料理、冬はフグやアンコウ、ヒラメの食べ比べなど。利益を確保するためには、料理内容などソフト面で対応するしかありませんでした。すると、努力のかいあって、03年に5000万円の経常利益が出たのです。

●根拠のない見通し

 今にして思えば、このとき民事再生法の適用を申請して、スポンサーを募るなり、私が社長になって過去の負債を軽くした上で自主再建するなりといった道があったと思います。

 ただ、このときは私も含めて伯父や父も安心し、根拠がないまま、翌年以降も黒字が続くと考え、ほぼ全額を借入金の返済に充てました。せめて金融機関と交渉し、5000万円を部屋や風呂の設備投資に回していれば、その後の集客力が増したかもしれません。

 世代間のギャップは、家業と事業のどちらを残すかという議論でも生まれました。

 04年以降、業績悪化に歯止めがかからない中、私は会社の売却も検討すべきと考えるようになりました。「ホテルチェーンなどの傘下に入り、自主再建を断念する選択肢がある」と2人に伝えたのです。

●家業と事業の残し方

 老舗の看板は下げることになりますが、旅館としての事業は存続でき、交渉次第で従業員の雇用も守れると思いました。実際、地元にはチェーンの傘下に入って営業を続けている旅館があります。

 これに伯父と父は大反対。「ご先祖様に申し訳ない」と。溝が埋まらないまま経営を続けました。

 事態がいよいよ深刻になったのは、08年のリーマン・ショック以降です。売上高は10億円を割りました。資金繰りが苦しくなり、突発的な設備の補修費や従業員への給料、税金などの支払いが厳しくなり始めます。そこで手を染めてしまったのが私財の投入です。

 1000万円足りないなら、会長500万円、社長400万円、私100万円をそれぞれ出すことを家族会議で決める。最初は急場をしのぐだけのはずが、頻繁になる。法人と個人のカネの区別が付かない泥沼にはまっていきました。

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最終更新:8/16(金) 17:00
日経ビジネス

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