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日本中で3万人に授業した私が「教育は秋田に学べ」と主張する理由

8/17(土) 17:01配信

現代ビジネス

なぜ「出前授業」を始めたのか

 社会におけるあらゆる問題は「現場」から学ぶことが多い。教育問題も例外ではないだろう。

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 しかし教育に関しては誰でも論じることができるだけに、現場とは距離を置く方々からの発言もしばしば聞く。いわゆる「ゆとり教育」に至った経緯を1990年代半ばの教育課程審議会議事録などで参照しても、その傾向を読み取ることができる。

 その結果、「大多数の国民が不要と感じる数学を無理に学ぶ必要はない」という考え方が主流となって、2002年から日本では「ゆとり教育」が始まった。

 だが筆者の問題意識はその反対であった。筆者は90年代半ばから、「数学的なものの見方の面白さや重要性が狭い範囲でしか認識されていないことが根本にある」と考え、その誤解を解く活動を始めた。

 「ゆとり教育」を見直すきっかけとなった共著『分数ができない大学生』で「数学は役に立たないのか」という章を担当したように、新聞や雑誌を含む活字でその方面の行動を展開しはじめた。それと同時に、教育現場を訪ねて直接生徒に語る試みにもチャレンジしはじめたのだ。

 当時、子どもたちの理数離れを食い止めることを主な目的として、学校外の専門家が学校現場を訪ね、興味・関心を高める特別授業としての「出前授業」が盛んになっていたが、その流れに乗ったのである。

 2000年代に入ると、国も応援する形での「スーパーサイエンスハイスクール」「サイエンスパートナーシップ」「その道の達人」などの事業も展開されるようになってきたこともプラスとなり、出前授業の数もどんどん増えていった。

 その結果、現在までのべ200校以上の学校で1万5000人以上の生徒を対象に出前授業を重ね、感想文だけでも3000人以上の生徒からいただいたことになる。

 もちろんそれとは別に、41年間の大学教員人生で1万5000人以上の大学生の授業を担当してきた。つまり教えた生徒・学生の数は3万人を超えるわけだが、こうした授業でさまざまな学校の現場を訪ねることで、筆者は数多くのものを得ることができた。

 だが、こうした試みには、90年代から“識者”による「高校生は受験の話題には関心があっても、それとは無関係な話題には関心がないだろう」などの批判が絶えなかった。

 しかし、現実はその反対であった。

 日本各地に手弁当でも出かけた出前授業を通じて、筆者は「算数・数学に興味を持ってもらうことは可能だ」という結論を得たのである。たとえば、三重県の出前授業で出会った生徒に数年後、同志社大学理工学部数理システム学科での講師としての授業で顔を合わせたときは感激した。本稿では、筆者が見た“識者”の指摘の反論となる現実を紹介していこう。

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最終更新:8/17(土) 20:05
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