ここから本文です

小さなパン屋が実現、防災と世界の飢餓救済を両立するビジネスモデルとは?

8/17(土) 6:01配信

ダイヤモンド・オンライン

 視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

【この記事の画像を見る】

● 被災地に送った支援物資はきちんと届き 本当に役立っているのか

 地震や台風、集中豪雨などの災害が、以前よりひんぱんに起きている気がする。今週も大型の台風が列島を襲った。

 ニュース番組などで被災地の状況が映るたびに、募金だけでなく物資の支援も必要だと思う。しかし、遠方からの物資の提供には、送ったものがきちんと被災者のもとに届き、役立っているのか、一抹の不安があるのは確かだ。

 3年前の熊本地震の際、たまたまFacebookで大学時代の後輩の投稿を見つけた。彼女は福岡でバーを経営しているのだが、「お客さんが車で運ぶと言っているので、食料や衛生用品など支援物資を自分の店宛てに送ってほしい」と言うのだ。

 これなら安心できると思い、備蓄していたレトルト食品や缶詰、ウエットティッシュなどを段ボール箱に詰めて、宅配便で送った。

 すると翌日には「荷物届きました、今夜運びます!」と後輩からメッセンジャーで連絡がきた。少なくとも現地には確実に届くだろうと、安心できた。

 こんなふうに、自分が送ったものを、どんな人がいつ、どのように届けるかがわかるだけでも、物資を支援するハードルはだいぶ下がるのではないだろうか。

 さらに、平時から、被災地に必要な食料等が確実に届く「仕組み」が用意されていれば、万が一、自分が被災したときにも大丈夫と思える。

 本書『小さなパン屋が社会を変える』は、そんな支援の仕組みづくりに成功した、あるパン屋の取り組みを描くノンフィクションである。

 著者の菅聖子氏は、自由学園を卒業後、出版社勤務を経てフリー編集者となり、現在はライターとして活躍している。『一澤信三郎帆布物語』(朝日新書)、『子どもが幸せになる学校』(ウェッジ)など多数の著書を持つ。

 本書の“主役”であるパン屋とは、栃木県那須塩原市に本社を構える「パン・アキモト(以下、アキモト と略記)」。2代目社長(就任当時の社名は秋元ベーカリー)の秋元義彦氏は、1995年の阪神・淡路大震災への支援をきっかけに「パンの缶詰」を開発した。本書では、その経緯とともに、パンの缶詰を世界中の被災地や飢餓地域に届けるシステムをつくり上げるまでが描かれる。

 最近では、大企業がCSR(企業の社会的責任)の一環として、自社製品やサービスを被災地支援に役立てる活動を行うことは珍しくない。

 だが、当時のアキモト は、家族経営の小さなパン屋にすぎなかった。それでも世界を舞台に、自社のビジネスと社会貢献を見事に両立させることができたのは、なぜだろうか。

● 試行錯誤の繰り返しで完成した 3年間保存できる「パンの缶詰」

 「保存できる、やわらかいパンを作ってほしい」

 アキモトの秋元義彦社長に、神戸の教会関係者から、電話でそんな依頼があった。1995年、阪神・淡路大震災からしばらくたったころのことだ。電話の主は、教会で被災者に支援物資を配っていた。

 この依頼は、次のような震災直後の出来事を踏まえてのものだった。

 大地震が起きた日、朝のニュース番組であまりの惨状を目にした秋元氏は、「自分たちにできることはないか」と考えた。

 そして、すぐに自社工場で食パンやバターロールなど2000食を焼き、1日半をかけて神戸までトラックで送り届けた。

 だが、被災地は予想以上に混乱しており、せっかくの焼きたてパンは、うまく必要とする人たちに配られなかった。やがてパンは硬くなり、カビも生える。結局、半分以上が処分されてしまったという。

 秋元氏は、じくじたる思いで、処分されたという知らせを聞いた。

1/3ページ

最終更新:8/17(土) 6:01
ダイヤモンド・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

週刊ダイヤモンド

ダイヤモンド社

19年9月21日号
発売日9月17日

定価710円(税込み)

特集 日韓激突!
ものづくりニッポンの悪夢
特集2 ウェブサイト価値 2019
特集3 チェンジリーダーの哲学

ダイヤモンド・オンラインの前後の記事

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事