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<目撃>命がけ、小さな鳥のひなが100mの崖を飛び降りる

8/18(日) 9:12配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

生後わずか24時間、まだ飛べないカオジロガンのひなはなぜ巣を離れる?

 カオジロガンの一生は過酷だ。この鳥は、厳寒の北極圏でキツネなどの捕食者からひなを守るため、高い崖の上や岩棚に巣を作る。しかし、この戦略の欠点は、生まれてすぐのひなが、命がけの試練に直面すること。時に、高さ100メートルもある断崖絶壁を飛び降りなければならない。

【動画】命がけ、ひなが100mの崖を飛び降りる

 孵化してからわずか24時間で、ひなは草を食べるために巣を離れる必要がある。カオジロガンには、親が子に餌を与える習性はないからだ。

 餌にありつくため、また水辺に移動するため、ひなは高い崖から飛び降りる。身のすくむような光景だが、ひなの体はとても軽いので、通常、地面に落ちても死ぬことはないとアイルランド国立大学コーク校の非常勤教授デイビッド・カボット氏は言う。

 同氏は1985年、驚くべきこの行動を初めて撮影した。「ひなの体は軽くてふわふわなので、落ちる際、岩で弾んでいるように見えることがよくあります」と同氏は話す。「岩壁のひびや溝に挟まったり、鋭い角にぶつかったりして死亡するひなは、ほんのわずかです」

 本当に危険なのは、捕食者だ。主な天敵はホッキョクギツネだが、シロカモメも待ち伏せている。「キツネは、備蓄用にありったけのひなを捕まえようとします」とカボット氏。カオジロガンの親は、カモメやキツネを追い払おうとするが、たいてい失敗するという。

困難な撮影

 カオジロガンの主な繁殖地は、グリーンランド東部、ノルウェーのスバールバル諸島、ロシアのノバヤゼムリャ島などだ。

 ナショナル ジオグラフィックTVの番組『ホスタイル・プラネット 非情の惑星』撮影監督のマテオ・ウィリス氏は、3週間かけて今回の映像を撮影した。ひなが孵化するのは、6月下旬から7月上旬にかけてで、この時期はいつ孵化して巣から飛び降りてもおかしくないと、同氏は話す。映像に収めるためには、準備を整えた状態でずっと見張る必要があった。ウィリス氏は崖の上から、カメラマン2人は崖下からチャンスをうかがった。

「待って、待って、ひたすら待ちました」とウィリス氏は話す。「神経がすり減ります。ろくに眠らずに待ち続けるのですから」。そして、突然始まるジャンプをとらえなければいけないわけだ。「難しい撮影でした」と同氏は続ける。「灰褐色の岩壁を背景に、高速で落ちていく小さな灰色のひなを追わなければなりません。しかも、ひなが何かにぶつかると、方向が変わってしまうのです」

 何年も自然を相手に撮影してきたので、生き物に降りかかる困難にはある程度慣れていると、ウィリス氏は説明する。それでも、今回撮影した、生まれたばかりのひなが直面した過酷な状況には、心を打たれた。

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