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【遠藤航】ドイツの名門クラブに移籍した先に見据えることとは

8/18(日) 17:02配信

GOETHE

2大会ぶりのグループリーグ突破を果たしたロシアワールドカップから1年。躍進に喝采を浴びた日本代表の中で、思いを新たにした男がいた。遠藤 航。日本代表としてロシアの地へ赴くも、出場はかなわなかった。「成長しなければいけない」という決心で、Jリーグ途中での移籍に、考えるところもあったが飛び込んだベルギーリーグでの1年。そして、2019-2020シーズン、プレーの場をブンデスリーガへと移した遠藤の思いとは。短期連載最終回。

「同僚からはよく老けてるって言われますね」

そう笑う遠藤航は、確かに年齢よりずっと大人びて見える。落ち着いているのだ。本人が持つ資質はもちろんのこと、それだけの経験をしてきた証だ。

リオデジャネイロ五輪をはじめ各年代で日本代表に選出され、主将を任されてきた。湘南ベルマーレでは19歳にして主将としてチームをけん引した。

遠藤とともにプレーした選手たち、たとえば浦和レッズの柏木陽介は「歳に似合わない信頼感があった」と感心し、リオ五輪予選からともに戦った大島僚太は「世代に応じた目線でコミュニケーションが取れるキャプテン」と称えた。

遠藤を見ていると、そのコミュニケーションの取り方が独特であることに気づく。決して積極的に声を掛けるわけではないが、かといって何もしないでもない。いわば、「静」と「動」を使い分けたコミュニケーション方法なのである。大島が世代に応じた対応ができる、と言ったのはその感覚なのかもしれない。

「静」と「動」のコミュニケーションを使い分ける

本人にコミュニケーションについて聞くと、過去の経験で得た感覚について話をしてくれた。

「特に若い頃、ベテランの選手とプレーする機会が多かったことは、今振り返ると本当に貴重な時間だったと思います」

Jリーガーとしての道を歩き始めたのが2010年3月(2種登録)。17歳になりたての遠藤の周りには、たくさんのベテランがいた。

「当時、湘南の平均年齢も高めだったと思うんですけど、年齢が近い選手はほとんどいませんでした。その分、田村雄三さんとか、臼井幸平さん、寺川能人さん、坂本紘司さんといった年上の先輩たちがすごく気を使って話しかけてくれた。ありがたかったですね」

積極的に言葉を交わす、いわゆるコミュニケーションは「動」のイメージだ。

「僕自身、そこまでよく話すタイプじゃなかったんですけど、その経験があってコミュニケーションを取ることがいかに大事か教えてもらったと思います」

一方、「静」のコミュニケーションのイメージは「姿勢」を示すものだ。遠藤には坂本紘司の忘れられない言葉がある。

「湘南のユースにもいた僕にとって坂本さんは“すごい人”という感覚でした。もの心がついたころからずっと試合に出ていたんです。2010年にはチームをJ1に上げて、その年に降格してしまうんですけど、チームメイトに本当に信頼をされているキャプテンでした。その坂本さんが引退するとき、思っていたことを伝えたら『でも、俺はほとんどがJ2だから。J1で出続けないと意味がないよ』って話されていて。たとえ、みんなから尊敬されていて試合に出続けているすごい人でも、現状に満足せずに上を目指してやっていたんだ、そういう世界なんだと。憧れましたね。あれは」

そこから学んだのは、「姿勢」のコミュニケーションだった。ついていきたいと思わせる、求心力を得る方法は言葉だけではない、という経験とも言えよう。

こうして、年上の先輩に影響を受けつつ、並行して各年代のキャプテンを務め続けた遠藤が、この「静」と「動」のコミュニケーションを使い分けていくようになるのは当然だった。

たとえばキャプテンとして、いさめるべきチームメイトの言動を見たとき。

「結構、何も言わないようにしています。できるだけ気付いてもらうようにする、というか……たとえば、文句ばかり言って、練習にまじめに取り組まない選手がいたとしても、僕はあまり気にしない。自分が常に100%で練習に取り組む。そういう姿を見せたいと思っていましたね。チームの雰囲気を悪くするような言動があったとして、怒るのは簡単なんですけど、本人からしたら怒られたから変わるって難しいじゃないですか。だから、そうじゃない別のポジティブな方法や考え方を伝えようとしますね」

姿勢を見せるという「静」のコミュニケーションを取ることで、チームを引っ張っていこうとするときもあれば、「動」のコミュニケーションで、鼓舞するときもある。

「メンタル的に落ち込んでいる選手がいたりしたとき、それはある程度、声を掛けて気に掛ける必要があると思います。湘南のときに若い僕が多くの先輩に話しかけてもらったこともそうですけど、それによって本人が前向きになれるようにしたいな、と思っています」

こうしたコミュニケーションの重要性を認識しているからこそ、遠藤は海外へ移籍しても積極的に語学習得に励んだ。ベルギーリーグ・シントトロイデンに移籍すると、日本時代から勉強していた英語に加え、フランス語も勉強した。チームメイトと直接コミュニケーションを取るときに英語だけでは通じない選手がいたからだ。一年目からレギュラー格として出場し続けられた裏には、こうしたコミュニケーションがあったことは想像に難くない。

また、ベルギー時代にはもうひとつ、「動」のコミュニケーションを取るキャプテンシーに驚きもあった。

「ボタカというコンゴの選手がキャプテンだったんですけど、まず英語、オランダ語、フランス語が喋れるんですよ。それでいて(その言語が)うまい。チームの士気が下がったときなんかも、モチベーションを上げようと必死になって毎試合、毎試合声をかけていて。その辺は、びっくりしたというかリスペクトしていましたね。ふだんの練習はすぐ足が痛くなって休んじゃうんですけど(笑)」

唯我独尊、個人主義のイメージがあった海外で、改めてコミュニケーションの重要性を認識させられた出来事だった。

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最終更新:8/18(日) 17:02
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