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F1と腕時計と、地中海の青い海と空に想う──たかがモナコ、されどモナコ。

8/18(日) 20:11配信

GQ JAPAN

世界でもっとも遅いサーキット

ここでモンテカルロ市街地コースをおさらいしておこう。全長3340mで、昨年のポール・シッターのダニエル・リッカルド(アストンマーチン・レッドブル・レーシング)が記録した予選でのファステストラップは1分10秒810(レコード)、トップスピードはトンネルを抜けたあとの289km/hだった。78周のタイムを競うこのサーキットはコース幅が狭く、オーバーテイクが困難であることで知られる。自分の足で試走して感じたことだが、片側一車線の普通の道で時速250km/hでオーバーテイクするだなんて、無謀にもほどがある。まさに異次元の世界だ。タイム的には世界のどのグランプリ・コースの記録よりも遅いが、マシンの性能差が現れにくくドライバーの技量が試される屈指のドライバーズ・サーキットがモンテカルロなのである。

いよいよ決勝がはじまった。横付けしたボートを降りるとVIP用のゲートに案内される。観戦場所は、タグ・ホイヤーVIPロッジ。18コーナー(ラスカス)の手前、ピットを真向かいに眺めるコースサイドの特設ブース上階からマシンを見下ろすという、特別な場所だ。

隣のテーブルでは、ベラ・ハディッドもウィニー・ハーロウも、ちゃんとレースを見ている。いや身を乗り出して、一瞬で通り過ぎるマシンを必死に目で追っている。コースの反対側で繰り広げられるピット作業の迫力にも見入っている。テーブルで話している人もモニターをじっと見ている。ほぼみんなが辛口のロゼワインを飲みながら、モナコを、F1を楽しんでいるのだ。コースに背を向けている人など皆無だ。どこかの国のVIPラウンジのように、大音量のヒップホップでクラブ化することもない。ここでみなが聞きたいのは鼓膜を震わせるF1サウンドである。まわりのゲストたちも耳栓なんかしていない。モナコならではの華やかさとセレブな空気感が、そこにはあった。

女王陛下万歳が鳴り響く

ポール・ポジションからスタートしたメルセデスのルイス・ハミルトンが、レースを引っ張る。2番手でスタートしたチームメイトのバルテリ・ボッタスを抜いてセカンドに付けたレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは、66周にわたってハミルトンを追い詰めた。その差は1秒とない手に汗握る展開がつづき、残り3周というところで勝負をかけたフェルスタッペンがハミルトンのインに飛び込むが、惜しくもオーバーテイクには至らず、2位でチェッカーを受けた。ところが、フェルスタッペンにはピットアウト時の接触を理由とした5秒ペナルティが課されていたので、正式順位は4位。2位はセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)、3位はバルテリ・ボッタス(メルセデス)となった。ハミルトンは今季4勝目。通算77勝目を挙げ、勝利をニキ・ラウダに捧げた。

フライトの都合もあり、残念ながら表彰式はパスせざるを得なかった。後ろ髪を引かれる思いで遠ざかるサーキットを小型ボートから眺めながら海路をニースに向かっていると、モンテカルロに「女王陛下万歳」の英国国歌が誇らしげに鳴り響くのが聞こえた。

文・神谷晃(GQ)

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最終更新:8/18(日) 20:11
GQ JAPAN

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