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「事業承継型スタートアップ」の一般化を阻む3つのハードル

8/18(日) 13:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

2020年頃に数十万人の団塊世代の経営者が一斉に引退時期にさしかかるとされている(『2016年事業承継に関する現状と課題について』中小企業庁より)。事業承継のより一層の円滑化を図ることが急務であるが、経営状態、後継者問題などから親族間でもスムーズに行われているとはいい難いのが現状である。本記事では、公認会計士の久禮義継氏が、中小企業の事業承継問題の抜本的解決策となる可能性がある「事業承継型スタートアップ」について提案、解説する。

「起業率の底上げ」につながるという一石二鳥の効果も

今回の記事では、中小企業の事業承継問題の抜本的解決策となる可能性がある「事業承継型スタートアップ」について触れてみたいと思います。

筆者がこのスキームを考える契機となったのが「2017年版中小企業白書」(中小企業庁)です。中小企業庁は、同白書において、図表1とともに次のように述べています。

「起業・創業によりイノベーションが起こり、既存企業は成長を目指し、事業や経営資源(撤退企業を含む)が円滑に次世代に引き継がれるというライフサイクルが重要である」

これをあえて宗教的ないい方で例えてみると、ちょっと大げさですが、企業の「輪廻転生」ともいえ、このサイクルを通じて、通常所有と経営が一致している中小企業でもゴーイングコンサーン(※1)を実現することができるものと考えています。

※1 ゴーイングコンサーンは、「継続企業の前提」とも呼ばれ、会社が将来無期限に事業を継続していくという前提を指します。

では、ここで提示する事業承継型スタートアップとは何かということなのですが、前述の白書に従って定義してみると、次のような感じとなります。

「事業承継を控えた老舗を第三者承継により譲り受ける起業家または幼年期企業」(※2)

※2 ちなみに、紙面の都合により説明は割愛しますが、第三者承継の割合は一貫して増加しており、現在では4割を超えています。

もう少し噛み砕いていうと、

「老舗が売主で、起業家または幼年期企業が買主となるM&Aであり、買主は、老舗の経営資源や独自の強みなどに着目しながらも、最先端テクノロジーの導入やイノベーティブな視点を持ち込むことを通じ、老舗のビジネスモデルを抜本的に転換させ、再成長を目指す」

…ことと定義できるでしょう。

親族内承継における課題として「経営者としての適性や能力のミスマッチ」(※3)がよく指摘されますが、第三者承継によった場合、買主を十分精査できれば、そのリスクを回避することができます。

※3 後継者が過度に保守的、視野狭窄、新奇性欠如、発想が硬直的、常識に囚われすぎといった側面が強いため、次世代を担う経営者として力量不足のレッテルが貼られてしまうことを指します。

加えて、このスキームは、その性質上、付随的なメリットがあることも指摘できます。日本は過去から先進諸国との比較で一貫して起業率が著しく低いと指摘されてきました(※4)。そこで、このスキームを有効活用することによって、前述のとおり事業承継をより効果的に進めることができるとともに、起業率の底上げにもつながるという一石二鳥の効果が期待できるのです。

※4 平成29年度中小企業白書(中小企業庁)

ちなみに、昨年秋に、総合電機メーカー出身のワカモノが、最近流行りのM&Aマッチングサイトを活用して、自ら多額の資金を調達しながら第三者承継(≒起業)を行ない、紙面を賑わせた事例が、具体的ケースとして当てはまるでしょう(※5)。

※5 「新時代の働き方? サラリーマンが個人でM&A」(ワールドビジネスサテライト) https://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/feature/post_167032/

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最終更新:8/18(日) 13:00
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