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新幹線「のぞみ」車内殺人第1号・覚醒剤男が錯乱の末に……

8/18(日) 11:00配信

デイリー新潮

「12番B」席

 事件が起きたのは、一路東京を目指していた「のぞみ」号が、静岡県下の掛川駅を通過した午後8時25分ごろだった。その少し前に中村は、被害者となった食品卸売会社の埼玉支店長だった松野定哲さん一行に対し、

「静かにしてくれないか」

 と注意を呼びかけていた。ただ、そのとき、中村の態度はごく丁寧であったという。

 大阪での日帰り研修を終えて同僚3人と帰宅の途についていた松野さんの座席は、9号車の「12番B」席、椅子を回転させて、すぐ後ろ11番席の同僚と向かい合う形で座っていた。

 一方、中村が座る席は、松野さんの座席から通路を挟んだ3列後方の「9番C」席だった。互いに通路側、つまり中村が発した唐突な警告直後、ふたりはちょうど目を合わせる位置で対座する格好になったのだ。

 翌年2月に地裁沼津支部で開かれた初公判で中村は、このとき頭のなかで「敵をとってくれ」という子どもの声が響いたのだという奇っ怪な動機を語っている。

 覚醒剤による錯乱の矛先が、もっとも目に付きやすかった松野さんにたまたま向かってしまったと考えられる。客同士のいざこざが招いた惨事というよりは、むしろ狭い車中で起こった、通り魔事件といったほうが適切なのだろう。事件翌日、8月24日の朝日新聞朝刊には、同じ車両に乗り合わせた30代乗客のこんな言葉もあった。

「話し声がうるさいというのが動機らしいが、うるさい会話ではなかったと思う」

 全身に血しぶきを浴びたまま、ひとり九号車に残っていた中村は、緊急停車する新富士駅ホームに警官の姿を見つけると、犯行に使った刃渡り30センチものサバイバルナイフを手に、凍り付いた乗客の視線を一身に浴びながら、ばたばたと10号車、11号車へと逃げまどい、11号車の東京側出入り口から外に飛び出したところで、追ってきた警官に押さえられている。この際、もみあった警官の背に切りつけ、1カ月の重傷も負わせた。

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最終更新:8/18(日) 11:00
デイリー新潮

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