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藤村俊二さんが行った「一切、何も残さない」という究極の相続

8/19(月) 7:00配信

マネーポストWEB

 相続のルールは、たしかに複雑でややこしい。遺産をめぐって家族が仲違いする「争続」も少なくない。究極の相続の例として、「一切、何も残さない」という去り方もある。ダンディーかつ、ひょうひょうとした振る舞いで「オヒョイさん」の愛称で親しまれた藤村俊二さん(享年82)は、一貫して財産管理に無頓着だった。

 晩年の藤村さんと暮らし、介護をしていた長男の亜実さんが語る。

「親父が持っていたのは通帳1つだけで、ほかにはまるで何もありませんでした。財産のことは、ぼくも気になっていたけど、家族から話す内容ではないと思って遠慮していて、そのうち父の体調が悪くなり、なおさら聞けなくなりました」

 2015年10月に自宅で藤村さんが倒れた際、亜実さんはある大きな不安に襲われた。

「恥ずかしい話なのですが、父は医療保険にまったく加入していなかったんです。親父は高齢でかなり病気をしていたので、入れたとしても保険料がものすごく高額になってしまうため、入っていませんでした。どれくらい入院が長引くかもわからないし、その時は、ちょっとまずいなと思いました」(亜実さん)

 心配する亜実さんをよそに、藤村さんはまったく不安な顔を見せなかったという。

「親父は、その瞬間を大事に生きる性格で、同時に、将来のことを何も考えていなかった。だから、将来に対する不安もなかったんだと思います。借金など“負”の財産もなく、立派なもんで、親父の持ち合わせだけで、お金の面はちょうど間に合いました。口座は凍結されましたが、残っていたのは微々たる額です」(亜実さん)

 何も持たず生まれ、何も持たず死んでいった藤村さんの人生は、「見事だった」と亜実さんは言う。

「親父は、あまり物への執着がなく、不安や煩わしさからいつも心が解放されていました。そのおかげで、余裕やユーモア、人への優しさが生まれ、ひょうひょうとした人柄や人気につながっていたのだと思います。親父の生き方が正しかったのかはわかりませんが、最期まで人に迷惑をかけず、幸せに生きる方法を教えてもらった。それがいちばんの財産です」

 そんな藤村さんだが、生前、唯一望んでいたことがあったという。

「ぼくが子供の時、自分が死んだら骨をエジプトの砂漠にまいてくれと言われたことがあり、入院中に確認したら、『そうだ』と。『海に散骨すると白い粉が波に漂うから嫌なんだよ。砂漠なら一瞬のうちに砂か骨かわからなくなる』と言っていました」(亜実さん)

 まだ実現していない父との約束を、亜実さんはいつか果たすつもりだという。

 去り際に何かを残す人がいれば、何も残さない人もいる。どちらも、その人らしい終い方に違いない。死んだ後にこそ、その人の歩んだ人生が見えてくるのかもしれない。

※女性セブン2019年8月22・29日号

最終更新:8/19(月) 7:00
マネーポストWEB

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